「ルルシーの方は、悪夢見なくなったんですか?」

「あぁ…。なんかぱったりと見なくなった」

あら、それは良かった。

俺が見なくなったのにルルシーがまだ悪夢を見てるなら、我ながら無能も良いところだが。

「悪いものは、ぜーんぶあいつが持っていってくれたんですね…」

「…あいつ…?」

「俺です」

「…?」

全部俺の功績。うん。そういうことにしておこう。

俺じゃないけど俺だ。間違ってはいない。

「全く、今回のシェルドニア王国の一件には、本当に苦労させられましたよ…。腹立つから文句言ってやりましょうかね」

「本当にな…。俺も、シェルドニア語そこそこ習ったし、文句くらいは言ってやれるぞ」

さすが俺のルルシー。飲み込みが早い。

確かに今回のシェルドニアの一見は、本当に大変だったし苦労したし面倒臭かったけど。

でも、良いこともあった。

「ルルシーのメイド服姿を見ることが出来た上に…ルルシーにちゅーをしてもらえましたからね!それを差し引きすればむしろプラス…」

「あーはいはいそれは良かったねー」

「このまま結婚ルートに…」

「さて、仕事するか…」

「嫌ぁぁぁぁんルルシ~っ!俺達もう出会って何年になると思ってるんですか!そろそろ結婚しましょうよ!」

「誰がするか!そもそもお前、結婚結婚言ってるが、ルティス帝国では同性結婚は認められてないんだぞ。分かってるか?」

何だと?

「…ルルシー、あなたは分かってない」

「…何をだよ」

「愛があれば…制度なんて関係ないんですよ」

俺が、こんなにも良いことを言ったというのに。

ルルシーは、白い目で一言呟いた。

「…あるに決まってるだろ。何言ってんだお前」

ちょっと。酷い。

「良いこと思い付いた!シェルドニアに行って結婚だけして帰ってきましょうよ」

「ふざけんな。シェルドニアなんて二度と行くか!」

「ルルシぃぃ~っ!いけじゅ~っ!」

「引っ付くな!」

まだ結婚してくれないと言うのね。ちゅーまでしてくれたのに。

いけじゅだけど、でもそんなところが、涎が出るほど好き。