The previous night of the world revolution4~I.D.~

孤児院を出た俺達は。

その帰りに、もう一つ…ルルシーの思い出の場所。

かつてルルシーが孤児院を逃げ出してから、身を潜めていたという貧民街に立ち寄った。

ここは、ルルシーが生まれたアパートがある街より、更に荒廃していた。

というのも、俺達が足を踏み入れて十分とたたずに。

この貧民街を取り仕切っているらしいゴロツキ共が、俺達を取り囲んだからである。

「…随分とガラが悪くなったもんだな」

「本当。酷いですね」

外から来た俺達をいきなり取り囲むなんて、なんてえっちなんだ。

彼らはガムをくちゃくちゃ噛みながら、にやにやと俺達を見ていた。

今更ながら、貧民街に来るなら、もう少し安物の服を着てくるべきだったと後悔した。

こんな高級ゴスロリ服着てたら、そりゃあチンピラ達からすれば格好の的だ。

きっと皆ゴスロリが好きなんだろうな。

ゴロツキのボスらしき男が前に出て、煙草を吹かしながら顎をしゃくって、こう聞いた。

「お前ら、何処から来た?」

「ちょっと帝都から」

「帝都ねぇ…。まぁ、何処から来たなんてどうでも良い。俺達の縄張りに無断で入ってきたからには…払うもん払ってもらわないとなぁ」

…ほーう。

俺はにやっと笑って、大袈裟な態度で辺りを見渡した。

「え、縄張り…?カラスか何かが住み着いてるんですか?まぁそれは仕方ありませんね。彼らが何処に縄張りを作ろうと、それはカラスの勝手でしょ~♪ですし」

「…」

ゴロツキ達の顔色が変わった。

おいおい。煽り耐性ひっく。

こんなの煽りのうちに入ってないぞ。

「まぁどうでも良いんで、退いてください。俺達里帰りしに来たんですよ。ねぇルルシー」

「あぁ…そうだな」

しかし。

プライドを傷つけられたゴロツキ共が、そう簡単に引き下がるはずはなく。

彼らは、何処からか鉄パイプやら金属バットやらを持ち出して、臨戦態勢。

あらあら。やる気を出して。

「…もう一度チャンスをやるよ。払うもの払ってもらおうか。大人しく出せば、命だけは助けてやるよ」

「命だけは助けてやるよ(キリッ)ですって。ウケる~」

「…ルレイア。煽るな」

あ、ごめんつい。

帝都では、俺達に喧嘩を売るような命知らずはいないから、つい新鮮で。