The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…」

ルルシーは、俺がドアを蹴っ飛ばして開けた部屋に入り。

中を見渡した。

この部屋も、あちこち朽ち果てている。

カーテンはボロボロ、窓ガラスも割れ、ベッドの足は折れて傾いていた。

床には大きな穴が空いているし、壁にはひしゃげたドアが…って、あれは今俺が蹴っ飛ばしたんだった。

てへぺろ。

「…大丈夫ですか?ルルシー」

「…あぁ…」

ルルシーにとっては、トラウマを彷彿させる場所。

当然ながら、心穏やかではいられまい。

「…何だかな、今まで何処か夢のように思ってたけど…。夢じゃなかったんだな。俺、本当にここにいたんだな…」

ルルシーは、他人事のようにぽつりと呟いた。

「…分かりますよ、その気持ち」

俺もさっき、そんな気持ちになったから。

夢だったらどんなに良かったかな。

現実なんだ。この悪夢は。

「本当…。何が怖かったんだろうな。ルレイア、お前の気持ちが分かったよ」

「…ルルシー…」

俺は、先程ルルシーがしてくれたように、ルルシーの手を握った。

「ルルシーもよく頑張りましたよ」

「…そうか…?お前ほどじゃないけどな」

「もー照れ屋なんだから」

素直に、そうだねありがと~って言えば良いのに。

「…帰るか、ルレイア」

「もう良いんですか?」

「あんまり長くいたら危ないし…。それに、もう気が済んだよ」

「…なら、良いですけど」

これで少しでもルルシーの気が晴れたなら、何よりだ。

ルルシーは最後に一度だけ、部屋の中を振り返り。

「…」

その後は、もう振り返らなかった。