孤児院の中は、外観と同じくボロボロになっていた。
雨漏りしているらしく、廊下に水溜まりまで出来て、黒く濁っている。
天井の隅には巨大なクモの巣が張っているし、酷く埃っぽい。
歩く度に、廊下がみしみし鳴っている。
わー。お化け屋敷。
「気を付けろよルレイア」
「ルルシーこそ」
床踏み抜いて落ちたら、さすがに痛いじゃ済まなそうだ。
「…」
俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
もうすっかり荒廃してしまっているが、ここがかつて人の居住地だったという、その片鱗はあちこちに見られた。
床に転がっている、ボロボロに朽ちたぬいぐるみ。
子供用のものだと思われる、朽ちた小さなTシャツ。
何年も前のお菓子の空き袋も転がっていた。
成程、確かに孤児院だ。
ルルシーはここで…ここに暮らしてたんだなぁ。
決して、良い思い出なんてないのだろうけど…。
「…ここ…」
「はい?」
ルルシーが、廊下の突き当たりの部屋の前で、足を止めた。
「…前に話したろ?俺が…孤児院の先生を殺した場所だ」
「…そうですか。…入ります?」
「…入るよ」
ルルシーは、その部屋の扉を開けようと、取っ手を掴んだ。
しかし。
押しても引いても、扉は開かなかった。
「…?鍵か…?」
「いえ…これ、単にもう建て付けが悪くなってるのかもしれません」
「そういうことか…」
何年も放置されていた後遺症だろう。
折角ここまで来たのに、部屋が開かないとは…。
「外に出て、窓から入るしか…」
「…大丈夫ですルルシー、ちょっと下がってください」
「え?」
ここは、俺がお上品に…かつ優しく丁寧に、扉を開けるとしよう。
「…はぁっ!」
俺は、行く手を阻もうと立ち塞がる扉に向かって、渾身の回し蹴りを食らわせた。
くの字にひしゃげたドアが、室内にばびゅーん、と吹っ飛んで、壁にぶつかって落ちた。
「はい、ルルシー開きましたよ」
「…誰がドアを吹っ飛ばせと言った」
「毎度お馴染みルレイア流ノックじゃないですか」
「ノックじゃねぇ蹴り飛ばしてるんだろ。ただでさえ崩れそうな家なのに、安易に衝撃を与えるんじゃねぇ」
これで柱が倒れてぺちゃんこになりました、はさすがに笑えないもんね。
幸い、柱がみちみちと音を立てただけで、崩落は免れた。
良かった。
雨漏りしているらしく、廊下に水溜まりまで出来て、黒く濁っている。
天井の隅には巨大なクモの巣が張っているし、酷く埃っぽい。
歩く度に、廊下がみしみし鳴っている。
わー。お化け屋敷。
「気を付けろよルレイア」
「ルルシーこそ」
床踏み抜いて落ちたら、さすがに痛いじゃ済まなそうだ。
「…」
俺はきょろきょろと辺りを見渡した。
もうすっかり荒廃してしまっているが、ここがかつて人の居住地だったという、その片鱗はあちこちに見られた。
床に転がっている、ボロボロに朽ちたぬいぐるみ。
子供用のものだと思われる、朽ちた小さなTシャツ。
何年も前のお菓子の空き袋も転がっていた。
成程、確かに孤児院だ。
ルルシーはここで…ここに暮らしてたんだなぁ。
決して、良い思い出なんてないのだろうけど…。
「…ここ…」
「はい?」
ルルシーが、廊下の突き当たりの部屋の前で、足を止めた。
「…前に話したろ?俺が…孤児院の先生を殺した場所だ」
「…そうですか。…入ります?」
「…入るよ」
ルルシーは、その部屋の扉を開けようと、取っ手を掴んだ。
しかし。
押しても引いても、扉は開かなかった。
「…?鍵か…?」
「いえ…これ、単にもう建て付けが悪くなってるのかもしれません」
「そういうことか…」
何年も放置されていた後遺症だろう。
折角ここまで来たのに、部屋が開かないとは…。
「外に出て、窓から入るしか…」
「…大丈夫ですルルシー、ちょっと下がってください」
「え?」
ここは、俺がお上品に…かつ優しく丁寧に、扉を開けるとしよう。
「…はぁっ!」
俺は、行く手を阻もうと立ち塞がる扉に向かって、渾身の回し蹴りを食らわせた。
くの字にひしゃげたドアが、室内にばびゅーん、と吹っ飛んで、壁にぶつかって落ちた。
「はい、ルルシー開きましたよ」
「…誰がドアを吹っ飛ばせと言った」
「毎度お馴染みルレイア流ノックじゃないですか」
「ノックじゃねぇ蹴り飛ばしてるんだろ。ただでさえ崩れそうな家なのに、安易に衝撃を与えるんじゃねぇ」
これで柱が倒れてぺちゃんこになりました、はさすがに笑えないもんね。
幸い、柱がみちみちと音を立てただけで、崩落は免れた。
良かった。


