The previous night of the world revolution4~I.D.~

しばし、外から廃墟を眺めたルルシーは。

「…ちょっと、中に入ってみる」

おもむろにそう言って、柵を飛び越えた。

え。

「危ないですよ」

いつ天井が落ちてくるか、分かったものじゃない。

「分かってる。だからお前は来なくて良い。そこで待っててくれ」

「嫌ですよ。そんな不公平なの」

「は?」

俺はルルシーを追って、ひょいっ、と柵を乗り越えた。

「いつもルルシー、俺に一人で危ないところに行くなー、って言ってるじゃないですか。なのに自分が危険なところに行くときは一人で待ってろ、って?ズルいですよ」

「…」

一本取られた、みたいなしぶ~い顔でこちらを見るルルシー。

そんな顔で見ても駄目だから。俺一人だけ待ちぼうけなんて冗談じゃない。

ルルシーが行くところなら、それが何処であれ、俺もついていくぞ。

「…それもそうだな。分かったよ、気をつけてついてこい」

「はーい」

こうして、俺達は廃墟探索に乗り出した。

一応廃墟と言えども誰かの所有する土地なのだろうから、勝手に侵入したことがバレたら、色々厄介なことになるだろう。

しかし、問題はない。

バレたら厄介なことになるなら、バレないようにすれば良いだけのことだ。

孤児院の玄関には、錆びた南京錠がかけてあった。

更に、取っ手には鎖がぐるぐる巻き付けてあって、簡単には入れないようになっていた。

こんなところを施錠もせずに開けていて、不良の溜まり場になったら困るもんね。

しかし。

「よいしょっ…と」

こんな施錠は、俺達にとっては自動ドアと同じだ。

何の障害にもならない。

ちょちょいのちょいっと外して、難なく中にお邪魔した。