The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…そういや、ルルシーの母親は、まだ生きてるんですか?」

そこに向かいながら、俺はルルシーにそう尋ねてみた。

「さぁ…。知らない。アパートが取り壊されてるってことは、何処かに引っ越したんだろうけど…」

何処で何をしているのかは知らないと。

そもそも生きているかどうかも分からないと。

俺にとっては婚約者の母親だし、会ってみたいとは思うが…。

ルルシーの話を聞く限り、俺の母親に負けないくらい最低のクズだそうだし、会わない方が身の為なのかもしれない。

「もしルルシーが母親をぶん殴ってやりたいと思うなら、俺が探しますよ」

いかなる手段を使ってでも、ルルシー母の行方を探してみせよう。

探して、引っ張ってルルシーの前に連れて来させるのだ。

あとは煮るなり焼くなり、ルルシーが好きにすれば良い。

しかし。

「別に探さなくて良いよ。会いたくもないしな」

「…そうですか」

なら、余計なお節介はやめておこう。

「それより…。もうすぐだぞ、孤児院」

さすがのルルシーも、少し緊張しているようだった。

それもそうだろう。

ルルシーが闇の方に堕ちたのは、恐らく、この孤児院がきっかけ。

ルルシーにとっての、悪夢の根元。

それが、この孤児院…なのだろうけど。

「…」

「…お化け屋敷…みたいになってますね」

「…そうだな」

そこにあるのは、廃墟だった。

ホラー映画にでも出てきそうな廃墟。

もう何年も使われていないのだろう。窓ガラスは割れ、木造の屋根は所々朽ちて崩落し、穴が空いていた。

庭も先程のアパート同様、雑草まみれ。

不法投棄されているらしく、ガラス瓶や古雑誌が山になっていた。

何年も人が住んでいないのは明らかだった。

こちらも残っていないか…。でも、少なくとも孤児院の方は、建物の残骸くらいは残ってるな。

「…」

ルルシーは、廃墟となった第二の実家をじっと眺めていた。

…今どんな気持ちなんだろう。ルルシーは。

俺が先程、帝国騎士官学校の廊下を歩いていたときとは…また違う気持ちなんだろうな。