校舎を見終わったら、次に俺が立ち向かうべきは、一つだけ。
「…ルレイア…。学生寮にも行くか?」
「…えぇ。行きますよ」
「でも…」
俺に辛いことを思い出させるのではないかと、ルルシーは心配していたが。
「ここまで来たのに、学生寮だけ逃げる訳にはいかないでしょう。行きますよ」
「…無理はするなよ。頼むから」
「分かってますって」
OBだからって、勝手に学生寮に侵入するのは怒られるかもしれないが。
別に部屋を荒らす訳でもないし、目を瞑って頂こう。
校舎から学生寮までの道のりは、そう長いものではない。
でもこの道は俺にとって、地獄に続く道だった。
卒業してからもう十年以上たっているのに、それでもこの道を歩くと、嫌でも思い出してしまう。
今夜はどんなことをされるんだろう、無事に明日を迎えれるんだろうか、というあの恐怖。
何度味わっても慣れなかった恐怖を、俺はありありと思い出した。
ルルシーが隣にいてくれなかったら、今頃卒倒していたかもしれない。
成程確かに…こんな道だったな。
向かうのは、学生寮三階にあるN室。何を隠そう、俺が暮らしていた部屋だ。
学生寮の廊下も階段も、校舎と同じくかつてと全く変わりない。
まるで学生のときに戻ったような気がするな。
あのとき感じたのと同じものを、今もまた、感じていた。
「…ルレイア、大丈夫か?」
「…えぇ」
さすがに悪いかなとは思いながらも、俺はその部屋を開けてみた。
そこはかつて、俺にとって地獄以外の何物でもなかった。
今の俺にとっては、どうなんだろうと思ったのだ。
しかし。
そこは、決して地獄などではなかった。
何の変哲もない…ただの部屋だ。
人数分のベッドと、学生机と、小さな本棚と、隅っこにゴミ箱が置かれてあるだけの…無味乾燥な部屋。
…これが、地獄?
こんな部屋が、俺にとって地獄だったというのか?
「…ルレイア…」
「…なんか…馬鹿みたいですね」
「…何?」
下らない。実に下らないよ。
「こんなものの…一体、何が怖かったんでしょうね、俺は」
馬鹿馬鹿しい。つまらない。下らない。
なぁ、怖くないだろう?こんなもの。
俺が恐れていたのは、場所ではないのだ。
場所じゃなくて、人。
ここにいた人と、そしてここで過ごした記憶。
俺を本当に苦しめていたものの正体は、それだったのだ。
「…ルレイア…。学生寮にも行くか?」
「…えぇ。行きますよ」
「でも…」
俺に辛いことを思い出させるのではないかと、ルルシーは心配していたが。
「ここまで来たのに、学生寮だけ逃げる訳にはいかないでしょう。行きますよ」
「…無理はするなよ。頼むから」
「分かってますって」
OBだからって、勝手に学生寮に侵入するのは怒られるかもしれないが。
別に部屋を荒らす訳でもないし、目を瞑って頂こう。
校舎から学生寮までの道のりは、そう長いものではない。
でもこの道は俺にとって、地獄に続く道だった。
卒業してからもう十年以上たっているのに、それでもこの道を歩くと、嫌でも思い出してしまう。
今夜はどんなことをされるんだろう、無事に明日を迎えれるんだろうか、というあの恐怖。
何度味わっても慣れなかった恐怖を、俺はありありと思い出した。
ルルシーが隣にいてくれなかったら、今頃卒倒していたかもしれない。
成程確かに…こんな道だったな。
向かうのは、学生寮三階にあるN室。何を隠そう、俺が暮らしていた部屋だ。
学生寮の廊下も階段も、校舎と同じくかつてと全く変わりない。
まるで学生のときに戻ったような気がするな。
あのとき感じたのと同じものを、今もまた、感じていた。
「…ルレイア、大丈夫か?」
「…えぇ」
さすがに悪いかなとは思いながらも、俺はその部屋を開けてみた。
そこはかつて、俺にとって地獄以外の何物でもなかった。
今の俺にとっては、どうなんだろうと思ったのだ。
しかし。
そこは、決して地獄などではなかった。
何の変哲もない…ただの部屋だ。
人数分のベッドと、学生机と、小さな本棚と、隅っこにゴミ箱が置かれてあるだけの…無味乾燥な部屋。
…これが、地獄?
こんな部屋が、俺にとって地獄だったというのか?
「…ルレイア…」
「…なんか…馬鹿みたいですね」
「…何?」
下らない。実に下らないよ。
「こんなものの…一体、何が怖かったんでしょうね、俺は」
馬鹿馬鹿しい。つまらない。下らない。
なぁ、怖くないだろう?こんなもの。
俺が恐れていたのは、場所ではないのだ。
場所じゃなくて、人。
ここにいた人と、そしてここで過ごした記憶。
俺を本当に苦しめていたものの正体は、それだったのだ。


