The previous night of the world revolution4~I.D.~

俺は自分が今、夢の中にいるのだと知っていた。

だから、この建物も、目の前の人間も、全部俺の脳みそが作り出した幻なのだ。

従って、ここにある全ては、全て俺の記憶をもとに作られている。

我ながら、随分と精巧に覚えているものだ、と思った。

机の配置やら、教室の掲示物に至るまで、全てリアルに作られている。

こういうときは、自分の記憶力の良さが恨めしいが…。

まぁ、本当にこの通りだったのかは分からない。覚えていない部分は、俺の脳みそが勝手に「それっぽく」見えるように偽装してるのかもしれない。

掲示物の内容なんて、俺だってさすがに全部は覚えてないだろうからな。

そう、これは幻。何もかもが夢の世界の話。

現実ではない。

俺の現実は、いつだってルルシーだけだ。

怯える必要はないし、怖がるなんて馬鹿らしい。

分かっている。

分かっているのに。

「…毎晩毎晩、よく現れますね…。この亡霊共が」

ぼんやりとした暗闇から、俺をじーっと見つめる人影。

忌々しい帝国騎士官学校の制服を着た、若い男五人。

それに、ぐっちゃぐちゃになった教官の死体。

それらが、俺を憎々しげに睨んでいた。

…この野郎。

「…あなた方に、そんな目をする資格があると思います?」

なぁ。何を勘違いしてるのか知らないが。

「先に俺を闇に堕としたのはあなた達の方でしょう…。俺は堕ちたくはなかったんだ。光の方で生きていくはずだったんだ…」

それを、こいつらが踏みにじったのだ。

俺の人生を、まるで正反対の道に突き落とした。

それなのに、お前達が俺を憎む資格があるとでも?

まぁ、それが悪かったとは言わないがな。

闇に堕ちたからこそ、俺はルレイアでいられる…。だからこいつらには感謝しなきゃならない…のだろうが。

誰が、感謝などしてやるものか。

頭の隅っこに、いつでも。

光の方で生きていたルシファー・ルド・ウィスタリアがいるのだ。

身も心も闇に染まりながらも、まだ光の中に生きている自分がいる。

本来の…俺が生きるはずだった未来を望んでいる自分が。

…糞食らえだ、そんなもん。

「死んでもなお…俺の人生の邪魔をするとは…。良い度胸じゃないですか」

死んでない奴もいるけどな。

何とか、強がる気力はある。

憎しみを向ける彼らを、睨み返すことは出来る。

だが、声は震えていた。

怖がる必要なんてないのに。怯える必要なんてないのに。

それなのに、俺は怖かった。

何が怖いのか、自分でも分からないのだ。

ただ、漠然と怖い。

昔ここにいたときに感じていた恐怖を、俺はリアルに再体験してしまっているのだ。

恐怖の対象が分かっているなら、それを排除してしまえばそれで恐怖は終わり。

でもこの場合、恐怖の対象が分からない。

分からなければ、排除することも出来ないのだ。

ただ、怖い。

何でかは分からないけど…怖くて堪らない。

この恐怖を、俺は知っている。

昔ここにいたとき…毎日のように、絶えず俺の身を焦がしていた恐怖だ。