「失礼。特に他意はないから、答えたくなければ適当に流してくれ」

「…あぁ」

俺は手持ちの札をテーブルに開示した。

本日四度目のフルハウスである。

「…強いな。本職なのか」

彼の役は、8のワンペア。また俺の勝ちだ。

「本職…?いや、単なる趣味だ」

しかも、昔取った杵柄だ。

まぁ本職にしても良いのかもしれないが、生憎俺の本職は、もっとヤバいお仕事だからな。

すると、彼はすっ、と席を立った。

「これ以上続けても、貴殿を退屈にさせるだけだな。ここで引いておくことにする」

「そうか」

俺も回収するものは回収したし、それどころかお小遣いまでたっぷり稼がせてもらったから。

この辺りが引き際だろう。

「そういえば、お仲間の二人は来ていないのか」

「あの二人はカジノはやらないからな…。それぞれ好きなところで遊んでると思うぞ」

一人は映画鑑賞。

一人は美肌の為にエステに。

「そうか…。…プールにでも?」

…やけに聞きたがるな。本当に。

俺は答えるべきなのか?

二人の許可を取らずに、勝手に話すべきではなかろう。

「さてな。別行動しようとは言ったが、何処に行ったのかは聞いてない」

俺は勿論、二人が何処で何をしているのかは知っている訳だが。

敢えて知らない振りをして、教えなかった。

彼が何でそんなことを知りたがるのかは分からない。

もしかしたら、何の他意もなく、単なる知りたがりなのかもしれないが。

そこまで踏み入るべきではない。

根拠はない。俺の仮面がそう言ってる気がするだけだ。

「…そうか。では、また」

「あぁ」

彼もそれ以上は聞かず、そのまま静かに立ち去った。