The previous night of the world revolution4~I.D.~

…しかし。

今月から、食費とお小遣いを大幅に増額しようと提案したところ。

フューニャは、は?みたいな顔をして俺を見つめた。

「…何でですか。もっと豪勢なものを食べさせろと?」

「え?違うよ。だって毎月火の車だって…」

「…?」

「フューニャは粗末なものしか食べてないって」

…あれ?

「…誰が言ったんです?そんなこと」

「え?お義姉さんが…」

「お姉ちゃんが…。あぁ…そういえば先日ランチに誘ってくれたときに、そんな話をしましたね」

家計の話を?

「平日のランチなんて食べに来るのは久し振りですって言ったら、普段は何を食べてるのかと聞くから…」

「…フューニャって、俺がいない間、普段何食べてるの?お昼…」

今まで聞いたことなかったけど。

フューニャは俺と違って料理上手だから、好きなもの作って食べてると思ってた。

「そうですね…。お茶漬けに梅干しとか、卵かけご飯とか…」

「…!?」

「あとは素パスタですかね」

「…済まん、フューニャ!」

俺は、床に膝をついて土下座した。

こんな申し訳ないことをしていたなんて、知らなかった。

お義姉さんが聞いてくれなかったら、一生知らなかったかもしれない。

愚か者め。

「そんなに切羽詰まっていたとも知らず…!やっぱり今月から増額しよう!」

何なら倍にしても良い。

故郷では、ずっと食べ物に苦労していたに違いないフューニャに…二度とひもじい思いはして欲しくないと思っていたのに。

俺はなんということを。

ってか、そんなに足りないなら言ってくれれば良いのに。

別に金に困ってる訳じゃないんだから。

「何をしてるんですかあなたは…?顔を上げてください。別に切羽詰まってなんかいませんよ」

「でも…!お茶漬けとか素パスタしか食べてないって…」

「それは私が面倒臭いからです。あなたがいないのに料理なんて作る気にならないんですよ。私は」

…へ?

「私は別に料理が好きな訳でも、趣味な訳でもありませんよ。あなたが食べると思うから頑張って作ろうと思うだけで…。あなたがいないのに、キッチンに立つのが面倒なだけです」

「…え…。じゃあ、困窮してる訳じゃないの…?」

「してませんよ」

「なら…せめて外食するとか…お惣菜買ってくるとか…」

「そこまでして食べたくないですし…。そんなお金があるなら、良い食材を買ってあなたに食べさせてあげたいです」

「…!」

…フューニャさん。あなた。

うっかり本音を言ってしまったのが恥ずかしかったのか、フューニャはハッとして、それからぷいっとそっぽを向いた。

「…嘘です。別にあなたの為なんかじゃありませんよ。私が食べたいからです」

「フューニャ…」

「…とにかく!別に増額してもらわなくても良いですから。余計な出費です」

この話は終わり、とばかりにフューニャはふいっ、と顔を背けた。

夫婦の危機かと思いきや、嫁のめちゃくちゃ可愛い一面を見てしまって、悶死しそうだが。

それでもお義姉さんに怒られそうなので、やっぱり増額しよう、と思った。