The previous night of the world revolution4~I.D.~

フューニャの返事を聞いて、華弦はふっと笑った。

「それなら良かった。遠い異国で、あなたは私のことを覚えてもいないと分かっていても…。私は、あなたが生きていることと、そして幸せであることを願っていました。…祈りが通じたようで、何よりです」

…この人。

本当にフューニャのお姉さんなんだな。

何だか、妙にそう思った。

見た目はあんまり似てないんだけど、中身と言うか…。性格と言うか。

根っこの部分は、二人共そっくりだ。

「…幸せに暮らしているあなたに、マフィアとなった私は邪魔者ですね。もう二度と、会うことは…」

「えっ…!ま、待ってください」

華弦は、フューニャに気を遣ったのか、自分から身を引こうとした。

しかし。

「わ、私はあなたのことを覚えていません。姉がいたなんて…今、初めて…。でも、あなたのことを…他人だとは思えません」

「…!」

「あなたが本当に私の家族なら…私を恨まないでいてくれるのなら…。私は、これからも…あなたと…」

自分にそんなことを言う資格があるのかと、フューニャは消え入りそうな声でそう言った。

…成程。

ならば、その役目は俺が代わりに。

「…お義姉様、良ければ…またフューニャと会ってあげてください。時間の許す限り…。育った環境は大きく違うけれど…二人は姉妹で…そして、俺達は家族ですから」

「…家族…そう…家族…なんですよね」

華弦は、その言葉を繰り返した。

そう。家族だ。

「…分かりました。また…連絡しますね…フューニャ」

「はい…あの…お姉ちゃん」

フューニャは、戸惑いながら、恥ずかしそうに…そう呟いた。

お姉ちゃん、というその言葉に。

華弦の中に何かが目覚めたことを、俺はまだ知らなかった。