「…フューニャ。あの…ごめん。帰るか?」
こんなに怖がってるのに、これ以上無理させたくはなかった。
しかし、フューニャは僅かに首を横に振った。
すると、華弦が。
「…これだけは言わせてもらっても良いですか?」
「…何を?」
もしかして、フューニャに恨み節をぶつけるつもりなのか、と思った。
自分は売られて辛い思いをしたのに、お前だけ自分の存在すら知らず、両親のもとで育ち…今はルティス帝国で悠々自適に暮らしている、と責めるつもりなのかと。
しかし、違っていた。
「フューシャ。いえ…今はフューニャでしたか。私は、あなたを恨んではいません。全く、これっぽっちも」
華弦は、真っ直ぐにフューニャの目を見つめていた。
フューニャと…同じ、清廉な瞳だった。
妙に、姉妹なのだなと思ってしまった。
「箱庭帝国が過酷な国であることは知っています。秘境の里が今や、滅び去ってしまったことも。私はシェルドニアに売られたからこそ、憲兵局の粛清を免れて、生き延びることが出来たんです」
それは…確かに、そうだが。
箱庭帝国で、生きるか死ぬかの生活をするのと。
シェルドニアで、奴隷として生きるのと。
どちらが良いかと聞かれたら…それは、なんとも言い難い。
「大体箱庭帝国にいても、国民は奴隷扱いなのだから…。私の境遇は、大して変わらなかったでしょう。むしろ粛清を免れただけ、幸運だったとも言えます」
…そういう考え方も出来るかもしれない。
でも…だからって。
例え奴隷扱いだったとしても、家族が傍にいるのと、いないのとでは…全く…。
「私は不幸などではありません。シェルドニアに行ったからこそ得たものもあります。奴隷だったからと言って、辛くて苦しい思い出しかなかった訳じゃない。幸せな思い出もちゃんとあります。だから、私を可哀想と思ったのなら、それはやめてください」
「…」
「あなたには分からない苦労が、私にはたくさんありました。でも箱庭帝国に残ったあなたも、私には分からない苦労がたくさんあったことでしょう。不幸自慢など下らない。私は今満ち足りています。そしてきっとあなたも…今は、幸せに、暮らしているのでしょう?」
華弦がそう尋ねると、フューニャはハッとして、そして俺の顔を見て。
「…はい」
こくり、と頷いた。
こんなに怖がってるのに、これ以上無理させたくはなかった。
しかし、フューニャは僅かに首を横に振った。
すると、華弦が。
「…これだけは言わせてもらっても良いですか?」
「…何を?」
もしかして、フューニャに恨み節をぶつけるつもりなのか、と思った。
自分は売られて辛い思いをしたのに、お前だけ自分の存在すら知らず、両親のもとで育ち…今はルティス帝国で悠々自適に暮らしている、と責めるつもりなのかと。
しかし、違っていた。
「フューシャ。いえ…今はフューニャでしたか。私は、あなたを恨んではいません。全く、これっぽっちも」
華弦は、真っ直ぐにフューニャの目を見つめていた。
フューニャと…同じ、清廉な瞳だった。
妙に、姉妹なのだなと思ってしまった。
「箱庭帝国が過酷な国であることは知っています。秘境の里が今や、滅び去ってしまったことも。私はシェルドニアに売られたからこそ、憲兵局の粛清を免れて、生き延びることが出来たんです」
それは…確かに、そうだが。
箱庭帝国で、生きるか死ぬかの生活をするのと。
シェルドニアで、奴隷として生きるのと。
どちらが良いかと聞かれたら…それは、なんとも言い難い。
「大体箱庭帝国にいても、国民は奴隷扱いなのだから…。私の境遇は、大して変わらなかったでしょう。むしろ粛清を免れただけ、幸運だったとも言えます」
…そういう考え方も出来るかもしれない。
でも…だからって。
例え奴隷扱いだったとしても、家族が傍にいるのと、いないのとでは…全く…。
「私は不幸などではありません。シェルドニアに行ったからこそ得たものもあります。奴隷だったからと言って、辛くて苦しい思い出しかなかった訳じゃない。幸せな思い出もちゃんとあります。だから、私を可哀想と思ったのなら、それはやめてください」
「…」
「あなたには分からない苦労が、私にはたくさんありました。でも箱庭帝国に残ったあなたも、私には分からない苦労がたくさんあったことでしょう。不幸自慢など下らない。私は今満ち足りています。そしてきっとあなたも…今は、幸せに、暮らしているのでしょう?」
華弦がそう尋ねると、フューニャはハッとして、そして俺の顔を見て。
「…はい」
こくり、と頷いた。


