The previous night of the world revolution4~I.D.~

違うんだよ、本当に浮気じゃないんだよ、と半泣きで訴えること10分。

フューニャは、渋々俺に弁明の機会を与えてくれた。

「浮気じゃないなら何です。その女モノの香水の匂いは」

多分、華弦のものだと思われる。

「さっきまで…その…同僚と一緒に車に乗ってたから…」

先に華弦を、レストランに送ってきたから。

車内で、彼女の香水の匂いが移ってしまったのだろう。

「ほう…?同僚と?女性ですよね?」

「うん…」

彼女はルレイアさんの派閥の準幹部になるということだから、同僚という言葉に嘘はない。

しかし。

「…二人きりで?」

「…二人きりで…」

「…助手席に乗せて?」

「…助手席に乗せて…」

お義姉さんだから。

特に考えずに…助手席に…。

「何処に行ったんです?二人で」

「…レストランに…」

…あれ?

なんか俺…取り返しのつかないことをしてしまったのでは?

「…へぇ…」

フューニャは、不気味なくらいにこー、と微笑んでいた。

天使のような…悪魔の微笑み。

「凄いですね。私、尊敬しました。『愛してるよ』って出かけていった夫が、同僚の女性と仲良くドライブに行って、しかもレストランとは。で、家であなたの帰りを待ってる妻にも、今夜外食しようね、ってメールしてきた訳ですか。面の皮が厚いとはこのことですね」

ヤバい。

これはヤバい。本当にヤバい。マジでヤバい。

「洗濯機で回して再教育しようと思いましたが、これはもう無理ですね。ちょっと待っててください悪魔を呼んでくるので。あなたのみならず、私も贄として捧げ、共に地獄に堕ちようじゃありませんか。私も付き合いますよ。二人で、永遠に業火に焼かれる…これも運命…」

「やめて、そんな運命は嫌だ!違うんだよフューニャ!」

そんな全てを悟ったような目をするのやめて!

確かに同僚(女)だけど、お義姉様だし。

レストランは行ったけど、送っていっただけだし。

俺に疚しいことは何もないはずなのだ!

「俺は…俺は浮気した訳じゃないんだ」

「…なら、その香水の匂いは何です」

「それは…その…」

これから明らかになると言うか…。

今はまだちょっと言えないと言うか…。

もごもごしていると、フューニャは心底胡散臭そうに俺を睨んだ。

駄目だ。完全に夫の不倫を疑う妻の目をしてる。

これは、本格的に何とかしなくては。