The previous night of the world revolution4~I.D.~

嫁の可愛さというものは、夫が一番よく分かっている。

それは俺も、ルヴィアさんも同じだ。

「うちの嫁は!世界一可愛いんです。一緒にしないでください」

「あ…うん…ごめん…」

今度ばかりは、ルルシーも余計な口出しはしなかった。

素直に認めておいた方が良さそう、と判断したようだ。

「…で、この人は何者なんですか?うちの嫁に髪の色だけ似てますけど」

似てるのは髪の色だけなのか。

ルヴィアさんフィルターを通した嫁の姿が見てみたいな。華弦とどれくらい違うのか。

「彼女は…箱庭帝国の秘境の里出身で…。あなたの嫁の、お姉さんだそうです」

「…へ?」

「あなたにとっては、義姉に当たる人物ですね」

「華弦と言います。妹がお世話になっているようで」

ぺこり、と頭を下げる華弦。

ルヴィアさんは、しばしぽかーんと華弦を見つめて。

それから。

「おっ…お義姉様でしたか!失礼しました。自分、ルヴィア・クランチェスカと言います」

いきなり、物凄く低姿勢になった。

襟を正し、服の裾をちょいちょい、と直して、かくん、と頭を下げた。

「手土産もなしに済みません。まさかお義姉様がいらっしゃるとは知らず…」

「いえ、気にしないでください」

「しかも、本来こちらからご挨拶に伺うべきでしたのに…。大変申し訳ない」

一生懸命好感度を上げようと頑張っていらっしゃる。

さっきまで華弦のこと、馬の骨だとか言ってなかったっけ?

それは忘れてるのかもしれない。

「それにしても、お義姉様が何故ここに…?」

と言うか、お姉さんいたのか、と思ってるだろうね。

俺達だって、シェルドニアで華弦に会わなきゃ、一生知らずにいただろう。

ルヴィアさん嫁の出身地が出身地だからな。

家族がいたとしても、多分全滅だろうと思っていた。

皮肉なことに華弦は、家族に売られたからこそ、生き延びることが出来たのだろう。

「それについては、俺達が説明しましょう。ね、ルルシー」

「あぁ…そうだな」

俺とルルシーは、シェルドニア王国での華弦との出会いについて話した。

華弦が、元々箱庭帝国の生まれだったことも。

ルヴィアさんの嫁が物心つく前に売られてしまったので、姉がいた事実はルヴィアさん嫁は知らないだろうということも。





一通り話終えた後。

「…そうだったんですか…」

ルヴィアさんは、難しい顔で何やら思案していた。

この人のことだから、嫁にどう教えたものか…そもそも教えるべきなのか…と、悩んでいるのだろう。

嫁を傷つけない為なら、自分が後ろめたい思いすることなんて、何とも思わないだろうからな。ルヴィアさんは。