The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…ルルシーさん!」

「え?ど、どうした?」

「うちの嫁を馬鹿にしないでください!うちの嫁は、もっと可愛いです!」

「…は?」

ぽかーん、とするルルシー。

しかしルヴィアさんは止まらない。

どうやら、嫁を侮辱されたように感じたらしい。

「うちの嫁は、もっと髪が艶々してて、でも触るとふわふわで…。それにこの人より、もうちょっと背が小さいんです。俺が正面から抱っこすると、丁度俺の胸のところに嫁の頭が来て、すっぽり収まる感じがまた可愛くて…。あとうちの嫁はこんなに無愛想じゃありません。もっと可愛いです。俺を見たらいつもてこてこ寄ってくるし、ぽふっと抱きついてくるし、ぐりぐりして甘えてきます。それがまたもんのすご~く可愛くて!とにかく可愛いんです!あ、それから肌の艶が、」

「わ、分かったルヴィア。分かったから!」

必死にルヴィアさんの話を遮るルルシー。

変な地雷を踏んでしまったらしいな。

とにかく嫁が可愛くて大変だ、ということが伝えたいようだ。

「こんな何処の馬の骨とも知れない女が嫁に似てるなんて、とんでもないです!そりゃちょっと髪の色は似てますけど、あとは全く似てないです。うちの嫁の方が、百倍は…いえ、千倍は可愛いです」

断言。

「…いや…似てると思うんだけどな…」

うっかり、ぽつりと呟いてしまったルルシー。

勿論、それを聞き逃すルヴィアさんではない。

「何処がですか!全然似てません!うちの嫁の方が可愛いです。ねぇルレイアさん!ルレイアさんもそう思いますよね!」

え、俺?

「ルレイアさんだって、ルルシーさんにそっくり(笑)な別人を連れてこられて、『この人ルルシーに似てるでしょww?』とか言われたら、舐めてんのかコラって思うでしょ!?」

「思う!めっちゃ思いますよそれは!」

俺はガシッ、とルヴィアさんの手を掴んだ。

なんてことだ。俺達はもっとも基礎的で、そして大事なことを忘れてしまっていた。

愛しい嫁の代わりなど、この世の何処にもいないのだと。

なんちゃってルルシー。そんなものは断じてルルシーではない。

それどころか、そんな下らん男を連れてこようものなら、そいつをぶっ飛ばしたくなる。

そうとも知らず、ルヴィアさんには悪いことをしてしまった。