新婚旅行二日目のその日。

俺達は朝食の後、早速『ホワイト・ドリーム号』を堪能することにした。

何と言っても、まず最初に楽しむべき目玉スポットは、あれだろう。







「おぉ~っ!すご~い!広いですね~!」

「実に絵になるな」

「あぁ…さすがの眺めだ」

俺達は早速、『ホワイト・ドリーム号』の展望台、『白亜の塔』に上ってみた。

さすが、この船の目玉スポットなだけある。

広い大海原が一望出来るぞ。

控えめに言って、絶景、である。

展望台の中は、大きなスピーカーがついていて、そこからシェルドニアの民族音楽が流れていた。

結構なボリュームのBGMだが、この絶景を前にしては、ちっとも耳障りには聞こえない。

「いやぁ、良いですねぇ。綺麗ですね。シュノさんやアイズ達にも見せてあげたいです」

「写真でも送ろうか」

「ナイスアイディアですね。よし、じゃあ三人で自撮り~♪」

「あっ、おい、こらルレイア。勝手に写真撮るな」

もールルシーったら。良いじゃん、写真くらい。

見せてあげようよ。シュノさん達に。

『白亜の塔』でぱしゃぱしゃと自撮りを楽しんでいた、そのとき。

「…貴殿らも、ここに来ていたのか」

シェルドニア語で話しかけられたので、俺は最初、自分が話しかけているとは思わなかった。

しかし、彼は明らかに、俺達に話しかけていた。

「…あれ…?あぁ、あなた昨日の…」

俺がぶつかった青年ではないか。

昨日はどうも。

「ここは気に入ってもらえただろうか」

彼は、まるで自分が造った場所のようにそう聞いてきた。

…もしかしてこの人、あれか。

『ホワイト・ドリーム号』の関係者なのか?

それにしては、クルーのバッチもつけていないけど…。

「えぇ、そりゃ気に入りましたけど…あなたも?」

「あぁ。俺は…この船に乗る度に、ここに来るんだ」

成程、そういうことか。

この人、この船の常連さんなのね。

こんな豪華客船に度々乗船するなんて、この人金持ちなんだな。

どういう立場の人間なのかは知らないが。

「同じ海でも、見える景色は毎日、毎時間違う。明日も足を運んでみてくれ」

「そうですね。そうします」

それだけ言って、彼は立ち去っていった。

「…何なんだ?あの人…」

ルルシーが怪訝そうな顔で俺に尋ねた。

「自主的な観光ガイドさんのつもりなんでしょうね。まぁ、そんなに悪い人でもないでしょう」

ツアー旅行なんかに行くと、稀によくいるよね。

どや顔で他のツアー客に旅行先の豆知識を披露する、ガイド気取りの旅行慣れしたおばさん。

あれだよ、あれ。

おばさんではないけどね。あの人。