The previous night of the world revolution4~I.D.~

その日の夜。

俺は、彼女の部屋を訪ねた。

「こんばんは、華弦さん」

「…ルレイア」

もう夜遅い時間だというのに、彼女は何やら忙しそうだった。

…荷造りで。

「ここを出ていくつもりですか?」

分かっていながら、俺は聞いた。

「えぇ…。私がここにいる理由は、もうなくなりましたから」

「ふぅん…」

復讐を終えた今、華弦がヘールシュミット邸にいる理由はなくなった。

アシミムも、華弦の復讐心を知った以上、もう彼女を自分の傍には置いておきたくないだろう。

だから、出ていく。

「何処に行くつもりですか?」

「さて…。私は元々、奴隷の身分ですからね。 また別の屋敷にでも…」

「シェルドニアにいれば、いずれ『白亜の塔』の餌食になるだけでは?」

これまでは、洗脳システムから除外されているヘールシュミット家にいたけど。

他の屋敷に行くなら、今度は洗脳から逃れられないはずでは。

「いずれはお金を貯めて、シェルドニアを出るつもりです。いつになるかは分かりませんが…」

「箱庭帝国にでも帰りますか?」

「どうでしょう…。帰っても、あの国にもう私の居場所はないでしょうからね」

そうかもね。

彼女が生まれた頃と比べたら、今の箱庭帝国は全く別の国と化しているだろう。

「箱庭帝国の代表とは、ちょっとした知り合いなので。あなたが祖国から海外に売られたと話せば、帰国させて、衣食を保証してくれると思いますよ」

華弦の事情をルアリスに話せば。

あの甘ちゃんなルアリスのことだ。すぐに帰国の手配をし、帰国してからも丁重に扱い、決して悪いようにはすまい。

しかし、華弦はあまり気が進まないようだった。

故郷とはいえ、生まれてからたった二、三年しかいなかった上に…何より、自分を売った国だからな。

華弦としては、複雑な心境なのだろう。

「…なら、俺達と一緒にルティス帝国でマフィアをやる、ってのはどうです?」

「…!」

華弦は、ハッとして顔を上げた。