The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…本当に、あなた方には感謝しかありませんわ」

…アシミムがシェルドニア王国の新国王に即位した後。

彼女は俺達に向かってそう言った。

今のアシミムは、最早縦ロールではない。

あのうざったい縦ロールはさっぱりと切り落とし、今はショートカットアシミムであった。

一体何があったのか。国王に即位するなり「本体」を切り離すなんて、頭でもおかしくなったのかなと思っていたら。

そんな白々しいことこの上ない台詞を、平気な顔して吐いてきた。

「何が感謝ですか。平気で人を洗脳して、利用しようとしておいて」

「…それについては申し訳ないと思っていますわ」

「口では何とでも言えるんですよ」

あんたが本当に感謝すべきは、俺達ではない。

ミレド・トレギアスだ。

あと、ルアリスだな。

ミレドがルティス帝国侵攻なんて、馬鹿なことを考えたから。

その計画をルアリスが聞き付けて、俺に報告してくれたから。

だから俺達には、ミレドを暗殺する理由が出来た。

そんな理由でもなければ、わざわざミレド王をぶっ殺すなんて危険な真似はしなかったよ。

まぁ、お互いの利害が一致したということだな。

俺とルルシーの愛を邪魔したアシミムは、今でも腹立たしいけど…。

とりあえずシェルドニア王国にコネは出来たし、アシミムが国王になった以上、先に恩を売り付けておくのは悪くない。

そう思って、納得するしかあるまい。

ってかアシミムのこととかもうどうでも良いから、早く帰りたい。

「出来ることなら、あなた方にはもう少しシェルドニア王国にいて欲しいところですけど…」

「冗談じゃないですよ。用はもう終わったんですから、さっさと帰してくれませんかね」

しかもこんな、いるだけでじわじわ洗脳されていく国でさ。

あと半年もいたら、俺達も立派なシェルドニア国民になってしまいかねない。

そんなのは御免だ。俺は、生粋のルティス帝国民だからな。

「…分かりましたわ。それから…相応のお礼とお詫びはさせて頂きますわね」

「そりゃどうも」

お礼とお詫び、ね。

綺麗な言い方してるが、要するに口止め料だろう。

ミレド・トレギアス暗殺の真相を知っている俺達は、謂わばアシミムの眉間に銃口を突きつけているのと同じ。

そして、俺達が前王暗殺の実行犯であることを知っているアシミムもまた、俺達に銃口を向けているのと同じなのだ。

お互い、前王暗殺の件については黙っているのが身の為ってことだな。

「それから…帰国するに当たって、一つ頼み事をしても?」

「頼み事?何でも言ってくださいな」

それは何より。

「頼みは二つ。一つ目、帰りは飛行機で、決して船は使わないこと。そしてもう一つは…」

むしろ、こちらの方が大事である。