The previous night of the world revolution4~I.D.~

国民を洗脳し、為政者の意のままに操る『白亜の塔』。

ここシェルドニア王国の国政の要であり、我が国の平和を支える基盤でもある柱だ。

元々シェルドニア王国は、昔から内乱が多く、しょっちゅう指導者が入れ替わる国だったそうだ。

争いと混乱の中で生み出された『白亜の塔』は、為政者にとっても、そして戦乱の度に巻き込まれて血を流す国民達にとっても、希望の星であった。

俺はアシミムさんのもとに来るまで、この国の洗脳システムについては知らなかった。

それを知る権利があるのは、選ばれた一握りの人間だけ。

ヘールシュミット家の当主であるアシミムさんも、その一人だ。

洗脳システムについて、アシミムさんが初めて俺に語ってくれたときのことを、俺は忘れない。

シェルドニアの恐るべき政策に驚くより、俺は彼女がそんな秘密を俺に語ってくれたことの方が嬉しかった。

俺に全幅の信頼を寄せてくれているという証ではないか。

それに。

異国人がどう思うのかは知らないが、俺にとって洗脳システムは、肯定されるべきものだった。

洗脳によって国民が穏やかになれば、暴力を受けて苦しむ人はいなくなる。

例え洗脳という手段を使ったとしても、誰も痛みに苦しむことがないなら、その方が良い。

人間本来の在り方など、知ったことか。

暴力的であるのがその人間の本質なら、それはなくなってしまった方が幸せだろう。

俺はそう思った。そして、こんな素晴らしいシステムで国を収めているシェルドニア王国を、誇らしいとさえ思った。

外国の国々で殺人事件や、テロや暴動が起きたというニュースを聞く度に、心の中で馬鹿にしたものだ。

人間本来の在り方にこだわって国民に自由にさせているから、あんな悲劇が起きる。

巻き込まれて傷つくのは、いつだって無関係の国民なのだ。

外国の為政者は、それが理解出来ないのだろう。

そう思っていたから、『白亜の塔』については肯定していた。しかし…アシミムさんが、そのシステムを使って、外国人のマフィアを洗脳すると言い出したとき。

俺は、思わず耳を疑った。