俺は怯え、震えながら自分を買ってくれた新しい主人について、新しい屋敷に向かった。
見たところ新しい主人は女性で、乱暴な真似をする…意地悪な人には見えなかった。
そもそもシェルドニアで奴隷を所有する主人のほとんどが、穏和で、暴力を厭うのが普通なのだが。
俺にとって主人のイメージは、それまで俺達奴隷に散々暴力を振るってきた、あの死んだ元主人だったから。
きっとあの人がそうしたように、この新しい女主人も、俺を鞭で殴るのだ。
汚い言葉で罵り、食事を抜き、粗末な衣服しか与えないのだ。
今度は、もう母もいない。完全に一人ぼっちなのだ。
そう思うと、涙が出そうになった。
泣けば殴られると思って、必死に我慢していた。
しかし。
「あなた…確か、名前はルシードでしたわね」
「…!」
いきなり話しかけられて、俺は言葉を失ってしまった。
奴隷が主人に口を利くなんて、前の屋敷では考えられなかった。
「…は、はい…」
たっぷり10秒はおたおたとして、それからようやく、蚊の鳴くような声で返事をした。
「そうですの。わたくし、あなたがとても賢そうに見えたものだから、思わず買ってしまったんですの」
「…」
「…あなた、わたくしがそんなに怖いですの?」
「…!そ、そんなことは…」
ある、とは言えなかった。
口が避けても。
「きっと、前の主人のもとで…怖い目に遭わされたのでしょうね」
「あ…」
少し顔を上げて、初めて気がついた。
アシミムさんは、聖母のように穏やかな笑みを浮かべていた。
「そんなに怯える必要はありませんわよ。わたくしは、あなたを傷つけるつもりはありませんわ」
「…」
「今日からは、わたくしがあなたの主人ですわ。あなたの主として、親として、あなたに愛をあげましょう。だから…」
その両腕は優しく、まるで母のようだった。
俺を地獄から救い出す、女神のようだった。
「いつか、わたくしが困っているとき…助けを求めているときに…わたくしの力になってくださいな。奴隷としてではなく…わたくしの理解者として…」
もし、誰かの為に命を尽くすなら。
…それは、この人であろうと思った。
見たところ新しい主人は女性で、乱暴な真似をする…意地悪な人には見えなかった。
そもそもシェルドニアで奴隷を所有する主人のほとんどが、穏和で、暴力を厭うのが普通なのだが。
俺にとって主人のイメージは、それまで俺達奴隷に散々暴力を振るってきた、あの死んだ元主人だったから。
きっとあの人がそうしたように、この新しい女主人も、俺を鞭で殴るのだ。
汚い言葉で罵り、食事を抜き、粗末な衣服しか与えないのだ。
今度は、もう母もいない。完全に一人ぼっちなのだ。
そう思うと、涙が出そうになった。
泣けば殴られると思って、必死に我慢していた。
しかし。
「あなた…確か、名前はルシードでしたわね」
「…!」
いきなり話しかけられて、俺は言葉を失ってしまった。
奴隷が主人に口を利くなんて、前の屋敷では考えられなかった。
「…は、はい…」
たっぷり10秒はおたおたとして、それからようやく、蚊の鳴くような声で返事をした。
「そうですの。わたくし、あなたがとても賢そうに見えたものだから、思わず買ってしまったんですの」
「…」
「…あなた、わたくしがそんなに怖いですの?」
「…!そ、そんなことは…」
ある、とは言えなかった。
口が避けても。
「きっと、前の主人のもとで…怖い目に遭わされたのでしょうね」
「あ…」
少し顔を上げて、初めて気がついた。
アシミムさんは、聖母のように穏やかな笑みを浮かべていた。
「そんなに怯える必要はありませんわよ。わたくしは、あなたを傷つけるつもりはありませんわ」
「…」
「今日からは、わたくしがあなたの主人ですわ。あなたの主として、親として、あなたに愛をあげましょう。だから…」
その両腕は優しく、まるで母のようだった。
俺を地獄から救い出す、女神のようだった。
「いつか、わたくしが困っているとき…助けを求めているときに…わたくしの力になってくださいな。奴隷としてではなく…わたくしの理解者として…」
もし、誰かの為に命を尽くすなら。
…それは、この人であろうと思った。


