The previous night of the world revolution4~I.D.~

俺は怯え、震えながら自分を買ってくれた新しい主人について、新しい屋敷に向かった。

見たところ新しい主人は女性で、乱暴な真似をする…意地悪な人には見えなかった。

そもそもシェルドニアで奴隷を所有する主人のほとんどが、穏和で、暴力を厭うのが普通なのだが。

俺にとって主人のイメージは、それまで俺達奴隷に散々暴力を振るってきた、あの死んだ元主人だったから。

きっとあの人がそうしたように、この新しい女主人も、俺を鞭で殴るのだ。

汚い言葉で罵り、食事を抜き、粗末な衣服しか与えないのだ。

今度は、もう母もいない。完全に一人ぼっちなのだ。

そう思うと、涙が出そうになった。

泣けば殴られると思って、必死に我慢していた。

しかし。

「あなた…確か、名前はルシードでしたわね」

「…!」

いきなり話しかけられて、俺は言葉を失ってしまった。

奴隷が主人に口を利くなんて、前の屋敷では考えられなかった。

「…は、はい…」

たっぷり10秒はおたおたとして、それからようやく、蚊の鳴くような声で返事をした。

「そうですの。わたくし、あなたがとても賢そうに見えたものだから、思わず買ってしまったんですの」

「…」

「…あなた、わたくしがそんなに怖いですの?」

「…!そ、そんなことは…」

ある、とは言えなかった。

口が避けても。

「きっと、前の主人のもとで…怖い目に遭わされたのでしょうね」

「あ…」

少し顔を上げて、初めて気がついた。

アシミムさんは、聖母のように穏やかな笑みを浮かべていた。

「そんなに怯える必要はありませんわよ。わたくしは、あなたを傷つけるつもりはありませんわ」

「…」

「今日からは、わたくしがあなたの主人ですわ。あなたの主として、親として、あなたに愛をあげましょう。だから…」

その両腕は優しく、まるで母のようだった。

俺を地獄から救い出す、女神のようだった。

「いつか、わたくしが困っているとき…助けを求めているときに…わたくしの力になってくださいな。奴隷としてではなく…わたくしの理解者として…」

もし、誰かの為に命を尽くすなら。







…それは、この人であろうと思った。