The previous night of the world revolution4~I.D.~

俺の最初の主人は、俺が六歳になる頃に亡くなった。

病気で急死したのだ。

驚いたが、俺を含め、奴隷達の中に悲しみはなかった。

俺達を苦しめ続けた諸悪の根元が死んだというのだから、喜びはあっても、悲しみなどあるはずがない。

主人が死んだことで、これから俺達は暴力と飢えから解放されると思ったのだ。

確かに、解放された。

でも、解放されなかった者もいた。

俺達は、この家の主人の所有物だった。

通常奴隷を所有する主人が死んだ後は、その主人の家族に所有権が移る。

主人の遺言に従って、俺達は主人の弟の所有物になった。

その弟も、死んだ主人ほどではないが、シェルドニアでは上流階級の人間だった。

…そして、死んだ主人に負けないほど、残虐な男だった。

しかし。

新しい主人のもとでの生活は、三ヶ月と続かなかった。

というのも、死んだ元主人には、多額の借金があったそうで。

その借金は、弟に丸々残された。

新しい主人は、少しでも借金返済の足しにする為に、元主人から引き継いだ奴隷を売りに出すことにした。

そして、俺は母から引き離され、奴隷市場に売られることになった。

母は泣きながら、どうか息子は手元に置かせてくれ。出来ないなら自分も一緒に売ってくれ、と主人に頼んだ。

しかし、新しい主人は、母の必死の嘆願に、鞭打ちで応えた。

子供は、従順で素直で、しかも幼ければ幼いほど躾けやすい為、奴隷としての価値が高い。

一方、年増になった女奴隷である母に、奴隷としての価値はそれほどなかった。

売っても、大した金にはならない。

だから母は主人のもとに残され、俺だけが奴隷市場に売られた。

屋敷から無理矢理連れ出される俺に、泣きながら手を伸ばし、俺の名前を叫ぶ母。

それが、俺が見た最後の、母の姿だった。

残虐な主人のもとに残された母は、その後、鞭で打たれたときの傷が治らず、それが原因で死んでしまったと、人伝に聞いた。