The previous night of the world revolution4~I.D.~

アシミムさんと出会う前。

俺は、奴隷の身分だった。

アシミムさんとの出会いは、彼女の奴隷として買われたことがきっかけだったから、俺は今も、彼女の奴隷と言えるのかもしれない。

しかし、アシミムさんは俺を奴隷扱いしたりはしなかった。

まるで、息子か…弟のように扱ってくれた。

俺にとって、彼女は女神だった。

このシェルドニアという国で、奴隷制度はそこまで残酷なものとは言えない。

国民を洗脳することが当然であるこの国では、主人は基本的に奴隷を虐待したりはしないし、奴隷にも人権がある。

しかし、それは一般階級の家に買われた奴隷だけ。

洗脳の対象から除外されている、支配者階級。

国王と、その下にいる上級官僚達。

この僅かな、一握りの人間と、その家族、そしてその家に住む奴隷だけは…洗脳されてはいなかった。

そして俺も…かつて、その一人だった。

俺は、国王に仕える上級官僚の家に住む、女奴隷の子だった。

母親は元々、シェルドニア王国ではない、別の…東方の異国で生まれで。

俺もその国に生まれたそうなのだが…生まれて三年足らずで、母親と一緒に奴隷として売られ、シェルドニア王国に連れてこられた。

そして、この国の上級官僚の家で働くようになった。

俺にとっても、母にとっても、この家で働く他の奴隷達にとっても…ここで働くのは、地獄のようなものだった。