The previous night of the world revolution4~I.D.~

夕食は、広い食堂でビュッフェを堪能した。

「ん~。うまうま~」

「さすが王国一の豪華客船。料理も絶品だな」

ワインも美味しい。お酒が進むな。

ルリシヤももりもり飲んでいた。

しかし、ルルシーは。

「…」

「どうしたルルシー先輩。あまり食が進んでないな」

「…この後迎える夜が心配過ぎて、食べる気がしねぇよ…」

あらルルシーったら。心配性。

まぁでも仕方ないよね。乙女の初夜だもの。

「大丈夫ですよルルシー。俺、処女の扱いにも慣れてるので。初めてでも最高に気持ち良くさせてあげます」

「さすがだなルレイア先輩。その道においてはプロだ」

えへんっ。

スーパーテクニシャンな俺に身体を預けておけば、何の心配もないというのに。

ルルシーは、深々と溜め息をついて、

「…泳いで帰ろうかな…ルティス帝国に…」

なんて、遠い目で呟いていた。

もールルシーったら~。シャイなんだから。

「それにしても、さっきから不思議な音楽が流れてるな」

ルリシヤは、俺が気になっていたことを代わりに言ってくれた。

「あぁ、俺も気になってたんですよ。ルティス帝国じゃ聞いたことないですよね」

食堂には、ややゆったりとした曲調の、独特なメロディのBGMが流れていた。

「シェルドニアの民族音楽ってところじゃないか?」

「かもしれないですね。さすがに向こうの音楽は、俺も聞いたことないですし」

俺にはこの曲の良し悪しは、よく分からないが。

これがシェルドニア王国伝統の音楽なのだと言われれば、あらそう、としか言えない。

あまり趣味が良いとは言えないな。

でも。

「料理の方は美味しいですよね。シェルドニア料理」

「あぁ、そうだな」

こればかりは、箱庭帝国とは大違いだ。

あそこの料理は不味くて食べられたものじゃないが、シェルドニア料理はなかなか美味しい。

「そうだ、ルレイア先輩。さっきそこに書いてあったんだが、シェルドニア古酒とやらが料理によく合って、美味いらしいぞ。折角だから飲んでみないか?」

「おっ、良いですね~。実は俺も気になってたんですよ」

シェルドニア名物、シェルドニア古酒。

これは是非とも堪能しなければ損だろう。

「ちょっと探してきましょうか。確かあっちの方に…」

「あっ、ルレイア、後ろ…!」

後ろ?

ルルシーに喚起されて、足を止める間もなく。

俺は、シェルドニア古酒を取りに行く為に振り向いた拍子に、ドンッ、と誰かにぶつかってしまった。