ならば、話は早い。

「俺はアシミムを憎んでいる。あなたも、アシミムを憎んでいる。復讐したい気持ちも同じ。そうですね?」

「…えぇ」

「そしてあなたは、ルルシーとルリシヤに協力を頼んだ。そうですね?」

「…」

こくりと頷く華弦。

「なら、あなたも俺達に協力して頂きます。異論はありませんね?」

「協力…?何をするのです。私の復讐は、あなたと違って、アシミムを直接殺すことではありません」

うん、それは聞いたよ。

「あなたの復讐は、ラトヴィ・ヘールシュミットの殺害でしたね?」

「そうです。ラトヴィを殺し、アシミムを絶望させること…」

なんて素敵な復讐だろう。

そうだね。俺を殺しても、ただ俺の物言わぬ死体を見られるだけで、大層つまらないだろうけど。

俺の目の前でルルシーを殺して、その死体を俺に見せたら。

それって、きっと俺自身が殺されるより、ずっと楽しいものが見られるだろうね。

そのことに気づくとは、さすがは華弦。

君、凄く良いよ。

俺も、あの金髪縦ロールの顔面が、年相応にしわくちゃに歪む様を、この目で見てやりたいよ。

きっと、物凄く面白いだろうね。

見物しながら良いお酒が飲めそうだよ。

「その為には、邪魔なミレド王を排除しなければなりません。しかし、あなた方は…ミレド王には用はないでしょう?」

「それが、そうも言ってられなくなったんですよ」

「…?」

最初は、そのつもりだったんだが。

ちょっとルアリスからとんでもないお話を聞かされたせいで、話が変わってしまった。

「俺達もまた、ミレド王に用が出来てしまいました。なんでもあの人、本気でルティス帝国侵攻を目論んでいるそうで」

「…ルティス帝国侵攻…!?」

「信じられない話でしょう?これがマジバナなんですよ」

夢か冗談だったら良かったんだけどね。

これが、夢でも冗談でも寝言でも妄言でもなく、本気で言ってるらしいんだ。

アホの子なんだろうね。

さすがアシミムの叔父。脳みその容量的には良い勝負だな。あの一族。

ついでにラトヴィって奴も糞なんだろ?

糞と縦ロールしかいないじゃん。これはもう末期だな。

救いようがないとはこのことだ。

「シェルドニアがルティス帝国に侵攻…。それがもし成功すれば、洗脳は世界規模に及びますね」

「そうなんですよ。世界征服でも目指してるんでしょうね。あの人」

夢は大きく、腹の肉も大きく。

治める大地は広く、頭頂部の砂漠も広いとは。

全く恐れ入るよ。さすがはシェルドニア王国の国王。

隙がないとはこういうことを言うんだろうな。

「それで、あなた方はミレド王のルティス帝国侵攻を止める為に…ミレド王の暗殺を目論んでいる、ということですね」

「えぇ。ミレド王を殺し、ルティス帝国侵攻を止める。そしてラトヴィが解放されれば…あなたにあげますので、アシミムと一緒に煮るなり焼くなり、好きにしてください」

「…分かりました」

華弦の目は、復讐心に染まっていた。

良い目だ。本当に好みだよ、それ。

「…ところで、華弦さん。俺、もうアシミムの前で、忠実な臣下の振りをするのは勘弁なので、演技するのやめようかと思ってるんですけど」

「え…?でも、ミレド王を殺すまで演技をする必要が…」

「ありませんよ。それでもミレド王を殺すことに変わりはありませんし。再び洗脳薬を使われても厄介ですからね。その前に…アシミムのゲロ顔でも見ておこうかと思って」

華弦には悪いが。

俺は一足先に、アシミムの縦ロールに唾を吐きかけさせてもらうとしよう。