「…」

今度は、リーヴァ達が黙り込む番だった。

「国民を洗脳するなど…。馬鹿げたことを」

「シェルドニア王国の犯罪発生率が低いのは…そのせいだったのか…」

アストラエアと、ウィルヘルミナが呟いた。

まぁ、馬鹿げたことをやってるのは確かだな。

何ならルティス帝国にも導入してみるか?俺達の普段の悩みは、一気に解決するだろうな。

ルティス帝国がそんな国になったら、俺は今すぐアシスファルト帝国に亡命するけどな。

「…もし本当にシェルドニア王国と戦争になったら、ルティス帝国は勝てるのか?」

「勝てるとは思うが…。アシスファルトや箱庭帝国にも協力を依頼して…」

「だが、それでも小さくない被害が出るのは間違いない」

「そもそも戦争など、ルティス帝国民が許すまい。戦っても、こちらが得るものは何もない」

「そう言っても、向こうから攻めてこられたら、迎え撃たない訳にはいかないだろう」

早速紛糾しつつある隊長会議だが。

慌てに慌てる先輩達を見て、ルーシッドが、

「皆さん、落ち着いてください。ルティス帝国には、シェルドニア王国と戦争する理由はありません。あくまで、暴力は使わず平和的に解決するべきです」

…正論だな。

国民達が一番に望む解決法はそれだろう。

誰だって、痛い思いや怖い思いはしたくない。

訳の分からない戦争のせいで、自分の生活を脅かされたくはない。

「だからと言って、攻撃されたらされっぱなしになる訳にはいかない。和平交渉を申し出ても、無視されたら意味がないんだぞ」

向こうが国際条約を守ってくれれば良いが、洗脳国家にそれを期待してもな。

倫理のりの字も知らないような奴らなんだから。

ある意味、箱庭帝国の憲兵局よりタチが悪い。

「だからと言ってやり返すのですか?それだとシェルドニア王国の思う壺です。戦争なんて手段を、手段として考えるのがそもそも間違ってる」

「やり返さない方が、余計にシェルドニア王国の思う壺だ。国を守るのは我々の義務。シェルドニア王国が本気で戦争をするつもりなら、我々も覚悟を決めるべきだ」

「しかし…!」

ルーシッドは、断固として戦争反対派。

ユリギウスやアストラエアは、宣戦布告されれば開戦も辞さないと。

どちらの言い分も、賛否両論あるだろうが…。

「…おい、オルタンス」

「んぁ?」

「爪ばっか見てないで、たまにはガツンと騎士団長らしいことを言ってやれ」

昔は言ってただろうが。こういうとき。

たまには言ってやれ。お前帝国騎士団長だろ。

「そうだな…。じゃあ、俺がさっきからずっと思ってることを言おう」

「あぁ」

この場の誰もが、オルタンスを方をじっと見て、彼の言葉を待った。

こういうときこそ、帝国騎士団長としての威厳と貫禄を見せ、

「このマニキュア…。やっぱりベーシュちゃんカラーの方が綺麗だったかな」

「…」

「…」

「…」

「…爪の話じゃねぇよ」

お前に期待した、俺が馬鹿だった。