The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…」

アイズレンシアから聞かされた話は、成程、そりゃ冴えない表情にもなるよな、という内容だった。

…冴えない表情、どころの騒ぎじゃねぇよ。

「…」

オルタンスも、青く光る爪を眺めながら浮かない顔。

爪を見るな爪を。

「俺はただ…ルレイアと仲良くハムスターランドに行きたいだけなのに…ややこしい話になってきたな…」

何を呟いてるんだお前は。

それどころじゃないだろう、今は。

とりあえず。

「…そういう話なら、他の隊長達も呼ぶべきだな」

「あぁ…」

こうなっては、もうルレイア達が無事に帰ってくるだけで済む話じゃない。

ルティス帝国の趨勢を左右する、重要な局面だ。

全隊長達に緊急召集をかけ、会議室に集まらせた。

ルレイアの件には関わっていなかったリーヴァやアストラエアやユリギウス、ウィルヘルミナ達まで呼ばれた。

この件についてはノータッチの彼らが、いきなり呼び出されたことで…皆、怪訝そうな表情だった。

リーヴァが、部屋の中にアイズレンシアの姿を見つけ、思わず声をあげた。

「オルタンス殿…これは、一体何事です?」

「ん?…あぁ、『frontier』とコラボした新色カラーで…」

いや、お前のマニキュアの話じゃねぇから。

気になるけど。そっちも。

「シェルドニアが、戦争仕掛けてくるつもりなんだとよ」

ふざけたオルタンスの代わりに、俺が簡潔に、事の次第を説明した。

「は…!?」

さすがに、リーヴァ達もこれには驚いたようだ。

…そりゃ驚くに決まってる。

「戦争…!?何故?」

「順を追って説明すると…まず、ルレイア以下、『青薔薇連合会』の幹部三人がシェルドニアの豪華客船に乗って、行方不明になったことから始まるんだが…」

俺は他の隊長達に、事の次第を詳しく話して聞かせた。

行方不明になったルレイア達が、シェルドニア王国に連れ去られたこと。

この計画を目論んだのは、シェルドニア王国の王族に連なる貴族、ヘールシュミット家の当主アシミムであること。

アシミムの目的は、ルレイアを使ってシェルドニア国王、ミレド・トレギアスを暗殺し、奪われた玉座を取り返すことであり。

その為に、アシミムはルレイアの洗脳を企み、実行したこと。

それどころかシェルドニア王国は、実は洗脳大国で、国民の全てが王国中に散らばった『白亜の塔』なる音響波を発する装置によって、国民の全てを洗脳していること。

そして今度は、ルティス帝国狙って戦争を仕掛けるつもりで、箱庭帝国のルアリスを勧誘したこと。

ルアリスは断ったが、ミレド王は侵攻を断念するつもりはないこと…。

俺達が今アイズレンシアから聞かされたのは、ざっとこんなところだ。