The previous night of the world revolution4~I.D.~

オルタンスは、爪にふーふー息を吹き掛けながらやって来た。

爪がやたらとキラキラ青いことに、次期首領も気づいただろうな。

気づいても何も言わない優しさよ。

「ルレイアの居場所が分かったのか?」

「えぇ。箱庭帝国のルアリスが、シェルドニア王国に行ってルレイアに会ったそうです」

「…!」

…俺も、先に来ていたルシェも、ホッと胸を撫で下ろした。

…とにかく、生きてんだな。あいつ。

それなら良い。あいつが生きてるのなら。

そして、オルタンスも。

「…それは良かった。ルーシッド、ハイタッチしよう」

「えっ!?そ、それは…。あの…遠慮します…」

「じゃあ代わりに握手してくれ。大丈夫だ、爪は乾いた」

「は、はぁ…」

オルタンスはルーシッド相手に握手させ、手をぶんぶん振っていた。

何をやってんだあいつは。荒ぶるな。

嬉しいのは分かるけども。

「で?今はどういう状況だ?」

「ルレイア達三人は、シェルドニア王国から出国する為にアシミムを闇討ちするつもり…だったそうなんですが」

うん?

「残念ながら、それほど簡単には行かないそうです」

「アシミムって奴は…そんなに厄介なのか?」

「いえ、厄介なのはアシミムではなく、ミレド・トレギアスの方です」

「…話が見えないな。ルレイア達を誘拐したのはヘールシュミット家のアシミムであって、ミレド王は関係ないはずでは?」

「…そのはずだったんですが」

…『青薔薇連合会』次期首領の、この冴えない表情。

ルレイア達の安否が分かり、諸手を上げて喜ぶべきところなのに。

それなのにこの表情ということは。

どうやら…素直には喜べない事情があるらしいな?