豪華客船『ホワイト・ドリーム号』は、ルティス帝国と大洋を挟んだ向こう側にある、シェルドニア王国が所有する観光船である。
ルティス帝国の港に停泊したその船に、俺達は三人揃って乗り込んだ。
「ほぇ~、噂には聞いていましたが、でっかいですねぇ」
俺はその真っ白な建築物を見上げた。
大きな客船の中央に、天に届くほど高い建物がそびえ立っている。
さすが、この船の目玉なだけある。間近で見ると、凄い迫力だ。
「何だ、あれ…。煙突みたいな…」
俺の視線の先に気づいたルルシーが、そう呟いた。
「知らないのか?ルルシー先輩、不勉強だな。この船の一番の見所じゃないか」
「いや、不勉強だって言われても…。俺、この旅行を知らされたの先週だからな?」
「あれは煙突じゃなくて、展望台なんですよ、ルルシー」
俺は、ルルシーにそう説明した。
「展望台…」
「そう。『白亜の塔』って名前でしたっけ。客船の展望台としては、世界最高の高さらしいですよ」
「展望台の最上階から見る景色は、絶景だそうだ。是非上ってみよう」
「へぇ…」
などとお喋りをしながら船に乗り込むと、燕尾服を着用したボーイさんが、俺達にお辞儀をした。
「いらっしゃいませ。『ホワイト・ドリーム号』にようこそ。失礼ですが、招待状はお持ちですか?」
「はい、どうぞ」
俺はオルタンスにもらったペア招待券を、ボーイさんに見せた。
更に、ルリシヤも乗船チケットを見せた。
ルリシヤのチケットは、俺とルルシーの招待券とは違う。
「…?ルリシヤだけチケットが違うのか?」
と、ルルシーが俺に小声で聞いてきた。
「そうなんですよ。俺とルルシーの部屋はオルタンスが予約したSクラスの客室なんですが、ルリシヤのはAクラスなんです。空きがなかったらしくて」
「そうなのか…」
「まぁ、でも昼間はお互いの部屋を訪ねられますし」
寝る場所が違うだけだ。昼間は一緒に行動出来る。
受けられるサービスも、ほとんど大差ないからな。
しかし。
ルリシヤのチケットを見た途端、ボーイさんはハッとして、それから申し訳なさそうな顔をして、深々とお辞儀した。
「申し訳ございません、お客様。お客様の客室ですが、ご予約されていたお部屋に、こちらの手違いで別のお客様の予約を入れてしまいまして」
「えっ」
これには、俺もルルシーもルリシヤも、ぽかんであった。
何だって?
「その為、ご予約されていたお部屋が使えなくなっておりまして…」
「おい、ちょっと何だそれは」
ルルシーが、怒りを滲ませてボーイさんに食って掛かった。
「こちらの手違いで…じゃないだろ。ルリシヤだってちゃんと予約してたのに、ルリシヤだけ門前払いにするつもりか?」
「ちょっとちょっとルルシー、怒っちゃ駄目ですって」
いつもルリシヤのこと、文句ばかり言ってる割には…こういうときはルリシヤの為に怒るんだもんなぁ。
ルルシーったらシャイなんだから。
「予約が取れてないってことは…俺だけ船には乗れないってことか?」
ルルシーに反して、ルリシヤは冷静だった。
「いえ、予約の取り違えは、こちらのミスですから。お客様には、Sクラスのお部屋を…そちらの二名様のお隣の部屋を空けておりますので、そちらへお泊まり頂きたいのですが」
「あぁ…成程」
これを聞いて、ルルシーも引き下がった。
予約していたAクラスのお部屋は、間違えて別の人を入れちゃったけど。
代わりに、Sクラスの…俺達の隣の部屋を押さえてあるので、そちらを使ってくれと。
まぁ、それなら良いか。
「誠に申し訳ございません」
ボーイさんは丁寧にお辞儀をして、ルリシヤに謝った。
ルリシヤは気にしてないという風に、ひらひらと手を振った。
ルティス帝国の港に停泊したその船に、俺達は三人揃って乗り込んだ。
「ほぇ~、噂には聞いていましたが、でっかいですねぇ」
俺はその真っ白な建築物を見上げた。
大きな客船の中央に、天に届くほど高い建物がそびえ立っている。
さすが、この船の目玉なだけある。間近で見ると、凄い迫力だ。
「何だ、あれ…。煙突みたいな…」
俺の視線の先に気づいたルルシーが、そう呟いた。
「知らないのか?ルルシー先輩、不勉強だな。この船の一番の見所じゃないか」
「いや、不勉強だって言われても…。俺、この旅行を知らされたの先週だからな?」
「あれは煙突じゃなくて、展望台なんですよ、ルルシー」
俺は、ルルシーにそう説明した。
「展望台…」
「そう。『白亜の塔』って名前でしたっけ。客船の展望台としては、世界最高の高さらしいですよ」
「展望台の最上階から見る景色は、絶景だそうだ。是非上ってみよう」
「へぇ…」
などとお喋りをしながら船に乗り込むと、燕尾服を着用したボーイさんが、俺達にお辞儀をした。
「いらっしゃいませ。『ホワイト・ドリーム号』にようこそ。失礼ですが、招待状はお持ちですか?」
「はい、どうぞ」
俺はオルタンスにもらったペア招待券を、ボーイさんに見せた。
更に、ルリシヤも乗船チケットを見せた。
ルリシヤのチケットは、俺とルルシーの招待券とは違う。
「…?ルリシヤだけチケットが違うのか?」
と、ルルシーが俺に小声で聞いてきた。
「そうなんですよ。俺とルルシーの部屋はオルタンスが予約したSクラスの客室なんですが、ルリシヤのはAクラスなんです。空きがなかったらしくて」
「そうなのか…」
「まぁ、でも昼間はお互いの部屋を訪ねられますし」
寝る場所が違うだけだ。昼間は一緒に行動出来る。
受けられるサービスも、ほとんど大差ないからな。
しかし。
ルリシヤのチケットを見た途端、ボーイさんはハッとして、それから申し訳なさそうな顔をして、深々とお辞儀した。
「申し訳ございません、お客様。お客様の客室ですが、ご予約されていたお部屋に、こちらの手違いで別のお客様の予約を入れてしまいまして」
「えっ」
これには、俺もルルシーもルリシヤも、ぽかんであった。
何だって?
「その為、ご予約されていたお部屋が使えなくなっておりまして…」
「おい、ちょっと何だそれは」
ルルシーが、怒りを滲ませてボーイさんに食って掛かった。
「こちらの手違いで…じゃないだろ。ルリシヤだってちゃんと予約してたのに、ルリシヤだけ門前払いにするつもりか?」
「ちょっとちょっとルルシー、怒っちゃ駄目ですって」
いつもルリシヤのこと、文句ばかり言ってる割には…こういうときはルリシヤの為に怒るんだもんなぁ。
ルルシーったらシャイなんだから。
「予約が取れてないってことは…俺だけ船には乗れないってことか?」
ルルシーに反して、ルリシヤは冷静だった。
「いえ、予約の取り違えは、こちらのミスですから。お客様には、Sクラスのお部屋を…そちらの二名様のお隣の部屋を空けておりますので、そちらへお泊まり頂きたいのですが」
「あぁ…成程」
これを聞いて、ルルシーも引き下がった。
予約していたAクラスのお部屋は、間違えて別の人を入れちゃったけど。
代わりに、Sクラスの…俺達の隣の部屋を押さえてあるので、そちらを使ってくれと。
まぁ、それなら良いか。
「誠に申し訳ございません」
ボーイさんは丁寧にお辞儀をして、ルリシヤに謝った。
ルリシヤは気にしてないという風に、ひらひらと手を振った。


