The previous night of the world revolution4~I.D.~

およそ30分後には、アシミム・ヘールシュミット殿が戻ってきた。

とはいえ、既にルレイア殿の無事は把握しているので、アシミム殿に会ったところで、大して意味はないのだが。

ルレイア殿達を拉致し、ミレド王の暗殺を画策していると聞いて、一体どんな女性だろうかと戦々恐々していたのが嘘のように、アシミム殿は…こう言ってはなんだが…普通の人であった。

一体何でこの人が、そんな大それた計画を立てたのだろう、と思うほど。

ただ、アシミム殿はミレド王とは違って、露骨に俺を邪険にするようなことはなかった。

一応、礼儀正しく接してもらったものの。

アシミム殿が俺に全く興味を抱いていないのは明白だった。

ルティス帝国の端っこにくっついている弱小国家の代表なんて、彼女にとってはそこら辺に転がっている石ころのように、どうでも良いものなのだろう。

それとなくミレド王の話も持ち出してみたが、彼女は巧みに話題をすり替えてしまった。

成程、ミレド王を憎んでいるというのは本当らしい。

自分から会いに来ておいて、こんな風に言うのは失礼だが。

俺は正直なところ、アシミム殿よりも、その後ろで甲斐甲斐しく仕えているルレイア殿と話がしたかった。

もし、本当にミレド王が、本気でルティス帝国侵攻を狙っているのなら。

俺は、そのことをルレイア殿に伝える義務があると思った。

ミレド王と約束したから、帝国騎士団には告げ口しないが。

しかし、『青薔薇連合会』に告げ口するな、とは言われていない。

ミレド王からすれば同じことだろうが、俺はルティス帝国に迫っている危険を知っていながら、黙っていることは出来なかった。

それに、これは箱庭帝国にも関係する問題なのだ。

万が一、ルティス帝国がシェルドニアの手に落ちるようなことがあれば…箱庭帝国だって、タダでは済まない。

箱庭帝国なんて、あっという間にぺちゃんこに踏みつけられてしまうだろう。

それだけは、絶対に許せない。

何より、ルティス帝国は俺の…俺達にとっての、恩人でもあるのだ。

ミレド王への義理立てよりも、俺はルティス帝国を守る方を選ぶ。

それに…一体何があって、ルレイア殿がこんなところで、アシミム殿に仕えているのか。

それも知りたかった。

だから俺はアシミム殿よりも、ルレイア殿と話したかったのだが…。

アシミム殿が見ている手前、とてもではないがルレイア殿と二人きりでは話せなかった。

…と、思っていたら。