翌朝。
改めて、ミレド王が俺の部屋を訪ねてきた。
「…昨日の話、やはり考え直してはくれませんかな」
…何かと思えば、またそんな話。
考え直して欲しいのはそちらの方だ、と言いたかったが。
その言葉を必死に抑えながら、俺は話を逸らした。
「何故、そこまでルティス帝国にこだわるのです?確かに肥沃な土地ではありますが…。失礼ながら…シェルドニア王国から海を挟んだ位置にあるルティス帝国を統治するのは、難しいのでは?」
ルティス帝国が箱庭帝国を統治するなら、話は簡単だろう。
すぐ隣の…近所なのだから。
でもシェルドニア王国は、そうはいかない。
ルティス帝国とシェルドニア王国は、行き来するだけでもそれなりの時間がかかる。
ルティス帝国を強引に植民地化すれば、当然ルティス帝国の民も反乱くらい起こすだろうが…そういうとき、どうやって対処するつもりなんだろう。
「問題ありませんな。我々が統治すれば…ルティス帝国民も大人しくするでしょう」
ミレド王は、何一つ心配していないようだった。
…何処から来るんだ。その自信は。
「それはまた…何故?国民に言うことを聞かせる…魔法でも使えるのですか?」
俺は冗談めかしてそう尋ねた。
下手くそではあるが、これでも鎌をかけたつもりだった。
するとミレド王は、一瞬…ムッとしたような…バツが悪そうな顔をした。
…その表情の意味は、何だ。
「貴国は犯罪発生率も驚くほど低いと聞きます。何か秘策でもあるのでしょうか。是非、参考にさせて頂きたいものです」
「はは、そうですな…。特にこれと言っては…。こればかりは国民性ですかな…」
「そういえば我が国でも、憲兵局の統治時代は、犯罪抑止の為に国民を洗脳教育で支配しようとしていましたが…。しかしそんな非人道的な手段は、最早手段とも言えませんね」
「…」
俺が微笑みながら、冗談めかしてそう言うと。
ミレド王は、ぎょっとしたような顔をして…そして、口を真一文字にして、一瞬俺を睨んだ。
…この表情の変化。間違いない。
「…どうされました?ミレド国王」
「いえ、なんでも…。…それより、今日はどうされますかな。良ければ、シェルドニア王国の観光地でも見て回られると良い。通訳とガイドをつけましょう」
「ありがとうございます」
この話はもう終わりとばかりに、ミレド王は話題を変えた。
だが、それはこちらとしても有り難い。
「では、シェルドニア上級貴族の方に、挨拶しに行こうと思います。確か、ヘールシュミット気に国王の姪御様がいらっしゃいましたね」
無論、アシミムのことだ。
「えぇ。彼女に会いに行くなら、私から宜しく伝えてください。また王宮に遊びに来るように、と」
「はい、分かりました」
この国が、本当に洗脳なんて恐ろしいことをしているのは分かった。
だから次は、ルレイア殿の無事を確かめに行く。
改めて、ミレド王が俺の部屋を訪ねてきた。
「…昨日の話、やはり考え直してはくれませんかな」
…何かと思えば、またそんな話。
考え直して欲しいのはそちらの方だ、と言いたかったが。
その言葉を必死に抑えながら、俺は話を逸らした。
「何故、そこまでルティス帝国にこだわるのです?確かに肥沃な土地ではありますが…。失礼ながら…シェルドニア王国から海を挟んだ位置にあるルティス帝国を統治するのは、難しいのでは?」
ルティス帝国が箱庭帝国を統治するなら、話は簡単だろう。
すぐ隣の…近所なのだから。
でもシェルドニア王国は、そうはいかない。
ルティス帝国とシェルドニア王国は、行き来するだけでもそれなりの時間がかかる。
ルティス帝国を強引に植民地化すれば、当然ルティス帝国の民も反乱くらい起こすだろうが…そういうとき、どうやって対処するつもりなんだろう。
「問題ありませんな。我々が統治すれば…ルティス帝国民も大人しくするでしょう」
ミレド王は、何一つ心配していないようだった。
…何処から来るんだ。その自信は。
「それはまた…何故?国民に言うことを聞かせる…魔法でも使えるのですか?」
俺は冗談めかしてそう尋ねた。
下手くそではあるが、これでも鎌をかけたつもりだった。
するとミレド王は、一瞬…ムッとしたような…バツが悪そうな顔をした。
…その表情の意味は、何だ。
「貴国は犯罪発生率も驚くほど低いと聞きます。何か秘策でもあるのでしょうか。是非、参考にさせて頂きたいものです」
「はは、そうですな…。特にこれと言っては…。こればかりは国民性ですかな…」
「そういえば我が国でも、憲兵局の統治時代は、犯罪抑止の為に国民を洗脳教育で支配しようとしていましたが…。しかしそんな非人道的な手段は、最早手段とも言えませんね」
「…」
俺が微笑みながら、冗談めかしてそう言うと。
ミレド王は、ぎょっとしたような顔をして…そして、口を真一文字にして、一瞬俺を睨んだ。
…この表情の変化。間違いない。
「…どうされました?ミレド国王」
「いえ、なんでも…。…それより、今日はどうされますかな。良ければ、シェルドニア王国の観光地でも見て回られると良い。通訳とガイドをつけましょう」
「ありがとうございます」
この話はもう終わりとばかりに、ミレド王は話題を変えた。
だが、それはこちらとしても有り難い。
「では、シェルドニア上級貴族の方に、挨拶しに行こうと思います。確か、ヘールシュミット気に国王の姪御様がいらっしゃいましたね」
無論、アシミムのことだ。
「えぇ。彼女に会いに行くなら、私から宜しく伝えてください。また王宮に遊びに来るように、と」
「はい、分かりました」
この国が、本当に洗脳なんて恐ろしいことをしているのは分かった。
だから次は、ルレイア殿の無事を確かめに行く。


