The previous night of the world revolution4~I.D.~

…冷静に考えたら。

俺は、愚かなことをしたのかもしれない。

確かにミレド王の言ったことも、分からない訳じゃない。

今はまだ、ルティス帝国と友好関係を築いている。

でも、これからもずっと仲良くしていられるとは限らない。

俺が生きている限り、箱庭帝国とルティス帝国が戦争をすることは有り得ない。

例えルティス帝国から攻め込まれたとしても、戦争はしない。

彼らに向ける刃など、俺にはない。

それに、箱庭帝国は自他共に認める弱小国家だ。ルティス帝国に逆らったって、勝てるはずがない。

憲兵局が、何で化学兵器なんてものを研究していたか…それが理由だ。

小さな箱庭帝国が、大国に負けない為には…そんな禁忌でも犯すしかなかった。

だが、俺に言わせれば。

国民を無駄に死なせるだけの戦争に、意味などない。

さっさと投降して、敗戦の辛酸を舐め、再起に賭けた方がマシ。

あるいは、大国に併合されるなら、すれば良いのだ。

大事なのは土地ではない。

国土があるから国になるのではない。

人がいるから、国が出来るのだ。

だから、そこに人がいるなら、幸せに日々を過ごしているのなら…国の名前など、何でも良いのだ。

俺は箱庭帝国を誇りに思っているが、だからと言って、箱庭帝国という名前に固執している訳ではない。

ルティス帝国に併合されるなら、それはそれで仕方ないと思っている。

シェルドニア王国の植民地にされるよりは…ルティス帝国の一部になった方が良い。

一国のトップに立つ者として、こんな考えは良くないのかもしれない。

だが…国を守るよりも、俺は人を守りたいと思った。

セトナ様も…同じように思ってくれるはずだ。

だから、ミレド王の申し出を断ったことは、後悔していなかった。