The previous night of the world revolution4~I.D.~

俺はミレド王より、ルティス帝国の良心の方を信じる。

それでいつか、ルティス帝国に裏切られることになったとしても…。

…きっとあの英雄なら、俺と同じ選択をするだろう。

自分の革命に協力してくれた、同志を…裏切るような真似はしない。

絶対に。

「申し訳ありませんが…私は、ルティス帝国を裏切ることは出来ません。この話はルティス帝国の…帝国騎士団の方々には決して漏らしませんから、ご安心を」

「…そうですか、それは残念だ…。こちらも、貴国には手を出しませんので…。貴国はくれぐれも、中立の立場を保っていてくださいよ。ルティス帝国の味方をして、こちらに銃を向けられたら…我々も、撃ち返さない訳にはいかないのですからな」

ミレド王は、溜め息混じりにそう言った。

…この人は、もう戦争することは決めているのか。

「…どうしても、ルティス帝国に攻め込むつもりですか。どうか考え直してもらえませんか」

ルティス帝国とシェルドニア王国。この大国二つがぶつかり合うなんて…。

箱庭帝国だって他人事ではいられないし…何より。

あの国が戦火に呑まれるなど、俺は耐えられない。

「貴国からの協力が得られない以上、これ以上議論する必要はありませんな」

俺に協力する気がないと分かったら、この素っ気ない態度。

折角勝ち馬に乗らせてやろうと声をかけてやったのに、俺がそれを無視したのだから。

この恩知らずめ、と思ったのかもしれない。

…ルティス帝国を裏切る方が、余程恩知らずだよ。




…その後、ミレド王は会食の最中にも関わらず、「急用が出来た」と言って、退席してしまった。

勿論急用などない。協力が得られない以上、俺と話す時間なんて、一分たりともない、ということなのだろう。