The previous night of the world revolution4~I.D.~

今度こそはと決意を固め、俺は夕食の席についた。

実は、シェルドニア料理は初めてである。

どの料理も何だか奇異に見えるし、洗脳する薬が入っているかもしれないと思うと、一気に食欲が失せる。

何より、シェルドニア国王と一緒に食事の席につくのだ。

緊張のあまり、そもそも食べ物が喉を通る心境ではなかった。

それに、食前酒として出されたシェルドニア古酒。

酒好きには堪らないらしいが、俺はどうもこの酒が口に合わなかった。

それでも、全く食べない、飲まない訳にはいかないので。

俺は、にこやかに食事をする…振りをした。

「どうですかな。シェルドニア料理の味は。やはり、祖国の素朴な味付けの方が口に合いますかな」

言外に、やはり田舎料理の方が口に合うだろう、と言われているようで。

非常に不愉快だった。

…むしろ、箱庭帝国の郷土料理と比べたら、シェルドニア料理の方が美味しいくらいだ。

シェルドニア古酒以外は、の話だが。

「いいえ、美味しいですよ。とても」

ルティス料理ほどではないけど、と。

言いたいが、黙っているのが大人の態度というものである。

「そうですか…。ところで話は変わりますが、ルアリス卿。先程言った、国防についてですが」

「…はい。何か?」

「失礼ながらお尋ねしますが、貴国の軍備管理はいかほどで?革命の後、革命軍は解散したのですか」

「…」

あまりに不躾な…そして国家機密に関する質問に、俺は言葉を失った。

…一体、何ということを聞くのだ。この人は。

ルレイア殿相手でも、返答に困る質問だろうに。

今日会ったばかりの相手に、しかも他国の王に、おいそれと答えると思っているのか。

それほど馬鹿だと思われているのか、俺は。

「…ミレド国王。申し訳ありませんが…その質問にはお答えしかねます」

「…やはり、答えてはくれませんか。我が国は貴国と友好関係を築きたいと思っているのですが…」

散々馬鹿にしておいて、友好関係とは、笑わせてくれる。

大体友好関係なんて、一日二日で築けるものではなかろう。

今日会ったばかりの相手で、しかもこれほど馬鹿にされているのに、どう信用すれば良いのか。

「申し訳ありませんが…国家機密に抵触しますので」

「…ふむ、やはり答えては頂けませんか…。ならばこちらも、腹を割って話すべきですな」

「…?」

ミレド王はいきなり声を低くして、険しい顔でこう言った。

「実は…我が国は遠からず、ルティス帝国に攻め込もうと考えているのです」

俺は絶句して、料理を食べる手が止まってしまった。