ミレド王が用意してくれた部屋に入ると、俺は緊張が解け、一気に脱力した。

「…はぁ…」

覚悟はしていたが…あれほど露骨とはな。

「…」

振り返ると、超絶不機嫌顔でイライラと貧乏揺すりしているユーレイリー。

長い付き合いだからこそ分かる。

ユーレイリー、これ本気で怒ってる。

大体、ユーレイリーにもちゃんと一人部屋が用意されていて、「従者の方はこちらの部屋に…」と言われたのに。

「いえ、結構です」と一刀両断して、こちらの部屋に強引に入ってきた辺り。

これはもうぶちギレだ。

今回は俺が怒らせた訳ではないから、その点では怖くないけど…。

「ユーレイリー…大丈夫か?」

「…えぇ。私は別に大丈夫です」

声の低さが、ユーレイリーの怒り度を如実に表している。

怖いなぁ…。

「…実に不愉快だったな、ユーレイリー…」

「…えぇ。実に不愉快でしたね」

舐められもするだろう。

馬鹿にされもするだろう。

それが分かっていて、この国を訪問したのだけれど。

やっぱり…あれだけ露骨だとなぁ。

国家元首としての品格にも関わると思うのだが、その品格すら頓着する必要がないほど、取るに足らない弱小国だと思われているのか…。

「結局、散々馬鹿にされただけで…。ルレイア殿達のことは何も聞き出せなかったし…」

「聞いても、何も知らない可能性も高いですけどね」

アイズレンシア殿が言うには、ルレイア殿達を拉致したのは、ミレド王ではなく…ヘールシュミット家のアシミムとかいう女性だ。

そのアシミムは、ミレド王の暗殺を目論んでいるらしい。

確かに…誰もに好かれる良い王様、という雰囲気の人ではなかったが…。

「それに、妙にルティス帝国を馬鹿にすると言うか…目の敵にしている節があったな」

「はい。それは私も気になりました」

国土の広さ、資源の豊かさで比べれば…シェルドニア王国は、ルティス帝国と良い勝負だ。

良い勝負ではあるけど…やっぱり、いずれにおいてもルティス帝国には、あと一歩及ばないかもしれない。

治安の良さだけは、シェルドニアが勝っているのだが。

それだけに、シェルドニアの国王としては…ルティス帝国に思うところがあるのだろう。

だからと言って、俺に八つ当たりされても困るのだが。

「まだ何か、話し足りないことがあるようでしたし…。夕食のときにでも話されるのでは?」

「そうかもしれないな…。俺も、あの国王とはもう少し話してみたい」

馬鹿にされるだけで、不愉快ではあるけれど。

少しでも、何か有益な情報を引き出したいと思った。