自分で聞いておきながら、箱庭帝国の名産の話なんて、どうでも良いらしく。

ミレド王は、早くも話題を変えてしまった。

またしても、ルティス帝国の話だった。

「隣国にあんな大きな国があったら、恐ろしいでしょう。憲兵局が長らく鎖国を続けていた理由も分かる気がしますな。そうでもしていないと、いつルティス帝国に手を出されるか…」

正直憲兵局の話なんて、俺はしたくなかった。

何より、革命の手助けをしてくれたルティス帝国…帝国騎士団や『青薔薇連合会』の人々を、悪者にしたくはなかった。

「…ご心配には及びませんよ。我が国は、ルティス帝国とは非常に友好的な関係を築いていますから」

「それは今の話でしょう?これから先もずっとそうだとは限らないじゃないですか」

それは…確かにそうかもしれないが。

「今は友好的な関係を築いていても、いつ手のひらを返すかなんて分かったものじゃないでしょう。そうなったとき…果たして箱庭帝国に、自国を守る術はありますかな」

「…」

どうせ、為す術なく滅びるだけだろう。

そう言われている気がして、俺は思わず言葉をなくした。

ルティス帝国のご機嫌を窺い、いつルティス帝国に潰されるかとびくびくしていると思われているのか。

「いや、誤解しないで頂きたい。それだけ国防には力を入れておいた方が良いという、単なるアドバイスですよ」

俺が気を悪くしたことに気づいたのか、ミレド王は慌ててそう取り繕った。

「…そうですか。ご忠告、感謝します」

ルレイア殿ならば、はっきりと言っていたのだろうな。

余計なお世話だ、と。

「長旅でお疲れでしょう、部屋を用意してありますから、少し休まれては如何か。日が暮れてから改めて、夕食をご一緒しましょう」

「…ありがとうございます。楽しみにしています」

俺は笑顔でそう答えて、ミレド王の従者に連れ添われて退室した。