ミレド王とテーブルを挟んで着席させられ。

俺の前に、紅茶のティーカップが出された。

「どうぞ、飲んでください」

「ありがとうございます」

この国が洗脳国家であるなら、出された飲食物に、無闇に口をつけるのはやめた方が良い。

それは分かっているが、国王の前で、勧められたお茶を飲まないなんて無礼は、とても出来なかった。

仕方なく、俺はティーカップに口をつけ、少しだけ中の液体を飲んだ。

特に何か、変な薬が混ぜられているようには感じないが…。

「どうです?味は。箱庭帝国ではお目にかかれないでしょう、アシスファルト帝国から直輸入した茶葉なんですよ」

「そうですか。とても美味しいです」

俺は笑顔で答え、ティーカップをソーサーに置いた。

祖国の名誉の為に言っておくが。

最近では、ルティス帝国の協力もあり、食料事情は安定している。

毎日とはいかなくても、来客があればこのランクの茶葉を出すことくらいは出来る。

いちいち張り合っても意味がないから、言い返しはしなかった。

「それにしても、箱庭帝国の代表と言えば、以前は憲兵局とかいう組織でしたが…。革命が起きたということは聞いていましたが、まさか本当に国家転覆させるとは。驚きましたなぁ」

ミレド王は、他人事のように笑いながらそう言った。

仕方がない。遠く離れた大陸にいるこの人達にとっては、俺達の命懸けの革命は…他人事に過ぎないのだから。

「えぇ…。長きに渡る圧政に、ようやく終止符を打ち…我が国は、新しく生まれ変わりました」

「で、今度はあなたが統治しているんでしょう?」

「…私だけではありません。志を同じくする同志達…そして、ルティス帝国の皆様にも助けられながら、平和を維持しているのです」

「へぇ…」

まるで興味のなさそうな、この返事。

完全に舐められていると言うか、馬鹿にされているが…。

この人にとっては、俺は取るに足らない小国の代表で、しかも若造だ。

馬鹿にされるのは無理もないとは思うが…俺が馬鹿にされると、箱庭帝国まで馬鹿にされているようで、こちらも気分が悪い。

「お宅も大変でしょう、新体制になっても、何をするにもルティス帝国の顔色ばかり窺って…」

「…はい?」

「あの国は横暴ですからなぁ。いつ攻め込まれて、国を解体されてもおかしくはない。全くルティス人というのは、野蛮でいけない。でも、自治を許してくれているだけでも感謝しなければならないんでしょうね」

俺はそのとき、はたと気がついた。

この人は、箱庭帝国がルティス帝国の属国だと思っているのだ。