The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…分かった。良いだろう…ルレイア、お前がそのつもりなら、俺はもう…全て諦める」

「…?」

俺はルリシヤにもらったオレンジ色のスイッチを、ルレイアに掲げて見せた。

「このホテルの敷地内、数ヵ所に…時限爆弾を仕掛けた」

「!?」

「っ、ルルシー先輩!」

驚いたのは、ルレイアだけではない。

ルリシヤもまた、愕然として俺を見つめた。

これが、計画の第二段階だ。

時限爆弾なんて嘘っぱちだ。このスイッチも偽物。

でもルリシヤは、さも爆弾が本物であるかのように演技をしているのだ。

「…まさか、あれを仕掛けたのか、ルルシー先輩…」

「…」

「…早まるな。あんなものを爆発させたら…俺達だってタダでは済まないんだぞ」

「…分かってるよ。そんなことは」

正直、俺は演技が得意なタイプではない。

けれど、今は苦手とか下手とか言ってられない。

このはったりを、信じてもらえなければ終わりなのだ。

だから、俺はわざと悲痛な顔をして見せた。

演技については、ルリシヤが事前にアドバイスをしてくれた。

「ルレイア先輩が苦しんでいるところを想像するんだ。そうすれば、ルルシー先輩は自然に辛そうな顔になるから」と。

だから、俺はルレイアが苦しんでいるところを必死に思い出した。

ルシファーだったルレイアが、二年間入院していた頃の、あの痛々しい姿を。

あれを思い出せば、成程、我ながら辛そうな顔になっていることだろう。

「このフロアは人払いさせたようだが…。さすがのお前でも、全ての宿泊客を待避させた訳じゃないんだろう?」

「…」

ルレイアは、険しい顔で黙り込んだ。

図星のようだな。

理由をつけて、アシミムの名前で無理矢理物を言わせ、ホテル側に協力を依頼して…宿泊客を逃がしたのだろうが。

無人に出来るのは、精々このフロアの宿泊客くらいだ。

王都の一等地にあるこの高級ホテルで、全ての宿泊客を無理矢理追い出すなんて、アシミムの権力と言えど、そんなに簡単には出来まい。

だからこそ、ルレイアは事が大きくなるのを恐れ、自分一人だけで俺達を捕らえに来たのだ。

「お前を取り戻せないのなら…俺は、今ここでお前と心中する…」

我ながら臭い台詞だと思ったが。

少し、本心が混じっていたかもしれない。

「ルルシー先輩!馬鹿なことはやめるんだ!生きていれば、ルレイア先輩の洗脳を解く方法だって…!」

「そんなものがあるか!俺は…俺はもう耐えられないんだ!」

ルリシヤの迫真の演技に応えるように、俺は声を荒らげて見せた。

これでルレイアに演技がバレたら、折角の演技が台無しだが。

ルレイアは、明らかに焦っていた。

爆弾が本物だという確信を持てている訳ではないのだろうが…。もし本当に爆弾が本物だったら、取り返しのつかないことになる。

どう動くべきか、判断しかねているようだ。

よし。今だ。

「…じゃあな、ルレイア…。あの世で、また会おう」

「ルルシー先輩!」

俺はオレンジ色のスイッチに指をかけた。

「っ…!」

俺の手からスイッチを奪い取ろうと、ルレイアが無防備に大きく踏み込んできた。

その隙を、ルリシヤは見逃さなかった。