The previous night of the world revolution4~I.D.~

華弦との密会を終え、俺達はバーを出て、潜伏しているアパートメントに戻った。

酷い…酷い気分だった。

「…ルルシー先輩、大丈夫か。酷い顔だぞ」

「…そうだろうな」

酷い気分だからな。

「華弦に協力するのが、そんなに嫌か?」

「…別に…」

「彼女に協力するのは悪いことじゃない。基本的には、こちらにデメリットはないからな。ミレド王暗殺まで放っておけば、勝手にアシミムを無力化してくれるんだから」

「…その為にルレイアが利用されても?」

それすら、デメリットではないと?

俺が気に入らないのは、その点だ。

これ以上、何で俺のルレイアを貸してやらなければならない。

今すぐにでも返して欲しいと思っているのに。

「別に俺は、タダでルレイア先輩を貸してやるつもりはないぞ?」

「じゃあどうやって、賃貸料を取り立てるんだ」

「…ルルシー先輩、怒ってるな?さては」

…怒ってる、だと?

俺が怒ってる?そんなつもりは。

「それとも気にしてるのか?華弦に言われたことを。一度死んでしまった人格は戻らないという、あの言葉を」

「…!」

「…ふむ。図星らしいな」

…何が図星だ。

「…当たり前だろ。ルレイアが戻らないなんて…。洗脳されたまま…もう二度と生き返らないなんて…そんなこと、受け入れられる訳ないだろ!」

むしろ何でお前は、そんなに平然としていられるんだ。

俺には、とても理解が出来ない。

「うん。俺も受け入れてないぞ?」

「は?」

何を当たり前ことを、と言わんばかりに。

きょとんとして、ルリシヤはそう言った。

「俺がルレイア先輩を、そう簡単に諦める訳がないだろう。あの人がそう簡単に死ぬはずないからな。どうやったらもとに戻るかとか、ちゃんと考えてるぞ」

「どうやったらって…」

それを考える気持ちは分かるし、俺だって散々考えたけど。

でも、誰よりシェルドニア王国の…そしてアシミムの手口を知っている華弦が、「洗脳を解く方法はない」と言っているのに。

俺達に…一体何が出来るって言うんだ?

「例えば、ルルシー先輩がルレイア先輩にキスをしてみたらどうだろう。何だかルレイア先輩っぽくていかにも…」

「お前っ…!ふざけるな!」

俺は思わず、ルリシヤの胸ぐらを掴んでいた。

この状況で、ふざけてる余裕が…!

しかし、ルリシヤは全く動じることなく、真顔でこちらを見つめていた。

「…俺は真面目に言ってるんだぞ。ルルシー先輩」

「…!」

俺はルリシヤから手を離した。

ルリシヤがこんなときふざける奴じゃないってことは、分かってるはずなのに。

もう、そうでもしないと他に方法がないのだ。

「…悪い。取り乱して…」

「気にするな。我ながら現実味の乏しい方法だとは思ってるが…。何もやらないよりはマシだろう。とにかく、ルレイア先輩をルティス帝国に連れて帰ることだ。連れて帰りさえすれば、どうとでもなる」

「…そうだな」

その為には、華弦の復讐に乗るのが一番の近道、ってことか。

少し考えれば分かるはずなのに、それすら分からないほど…切羽詰まっているらしいな、俺は。

「それにな、ルルシー先輩。俺は華弦に協力するつもりだが、みすみすルレイア先輩を利用させるつもりもないんだ」

「…は?」

「ようは、ミレド王を暗殺すれば良いんだろう?その目的さえ達成出来るのなら…先に俺達がルレイア先輩を取り返しても、問題ない訳だ」

ルリシヤは、さながらルレイアのごとく、にやりと笑った。

その笑みに、俺は味方ながらぞっとした。