The previous night of the world revolution4~I.D.~

アイズレンシア殿との電話から、一時間がたった後。

俺は急遽、セトナ様、ユーレイリー、ラシュナ、ヴィニアス、ミルミルを会議室に集め。

緊急会議を行っていた。

会議と言うか…既に決まってしまった、決定事項を彼らに伝えるだけなのだけど。

「…単刀直入に言う。俺はこれから…シェルドニア王国に視察に行くことになった」

「…」

ぽかーん、とする一同。

唯一、俺の隣でアイズレンシア殿との電話を聞いていたセトナ様だけは、諦めたような顔をしていた。

止めても止まりはしないと、分かってくれているのだろう。

申し訳ない。

「…一体、何事が起きて、そんなことになったのじゃ?」

ミルミルが尋ねた。

「アイズレンシア殿から連絡があったんだ。詳しく話すと…」

俺は先程アイズレンシア殿から聞かされた話を、仲間達に話して聞かせた。

さすがに、ミルミル達も唖然としていた。

「…そんな悪辣なことをして国を治めるのは、箱庭帝国だけかと思ってたよ」

ヴィニアスが、呆れたようにそう言った。

…俺も、その気持ちは分かる。

「それで、どうしてルアリスがシェルドニアに行かないといけないの?危険過ぎるわ」

と、ラシュナ。

…確かに、危険だとは思うが。

「でも、アイズレンシア殿に頼まれたんだ。この状況で、怪しまれずにシェルドニア王国に入り込めるのは…俺しかいない」

「…」

ルティス帝国から、視察団を出すことは出来ない。

口実がないからだ。

でも、俺にはある。

弱小国家で、ルレイア殿との関わりもそこまで知られていない俺なら。

「箱庭帝国は、丁度国政が落ち着いてきたところだ。国が新しい体制になったという報告と、挨拶を兼ねて…シェルドニアを訪問しにいこうと思う」

「…大丈夫なの?シェルドニアの洗脳システムが本物なら…ルアリスも…」

「アイズレンシア殿曰く、『白亜の塔』によって洗脳するには、かなりの期間が必要なそうだから…。数日滞在するだけなら、大した影響はないだろうって」

「それ本当?ミイラ取りがミイラになったんじゃ、笑えないよ?」

…ヴィニアスの言う通り。

シェルドニア王国が、俺に対しても何らかの強引な洗脳を使う可能性は、充分にある。

しかし、それでも俺は行くつもりだった。

「…これで少しでも、ルレイア殿に恩を返せるのなら…俺は行く」

「ルアリス…」

「あの人は、自分の危険を省みずに俺達を助けてくれたんだから…。今度は、俺が彼を助ける番だ」

箱庭帝国を捨てていくつもりはない。勿論、帰ってくるつもりでいる。

でも、俺にもしものことがあったときは。

「…後のことは頼みます。セトナ様…」

国を治めるパートナーでもあり、妻でもある彼女に、俺は後のことを託すつもりだった。

我ながら、無責任な夫であることは自覚している。

けれど、彼女は。

「…あなたは、止めても無駄だと分かっていますから…もう、止めはしません。あなたは、あなたの信念に従ってください」

「…ありがとう」

「…無事に、帰ってきてくださいね」

俺だって、彼女を残して死ぬつもりはない。

必ず、無事に帰ってくるつもりだ。