The previous night of the world revolution4~I.D.~

…一通り、アイズレンシア殿の話を聞いて分かったことは。

ルルシー殿と、仮面のルリシヤ殿の生存は確認されたものの。

ルレイア殿の安否は、未だに不明。

三人共、シェルドニア王国の貴族であるヘールシュミット家の当主の陰謀で、『ホワイト・ドリーム号』に乗せられてシェルドニア王国に連れていかれた。

拉致の目的は、ヘールシュミット家の当主アシミムが企む国王暗殺に、ルレイア殿を利用する為。

それだけでも充分衝撃的な話だが、それ以上に俺を驚かせたのは、シェルドニア王国の恐るべき国政だ。

『白亜の塔』とかいう、音響波を出す塔を、電信柱のようにあちこちに立て。

それを使って、国民を操っていると言うではないか。

にわかには信じがたいが、しかしアイズレンシア殿が事実だと言うのだから、その話は本当なのだろう。

アイズレンシア殿だって、信じられない話だってことは分かっているはず。

冗談でもなければ、作り話でもない。

本当に…シェルドニアは、そんな恐ろしいことをしているのだ。

俺も国を背負う者の端くれをやっているが…国民を洗脳するなんて、考えたことすらなかった。

あの憲兵局なら、いずれ思い付いたかもしれない。

やっていることの非道さで言えば、憲兵局と大差ない。

一見国民は幸せそうに見えるが、その幸せは、国王に無理矢理与えられたものでしかない。

こんなものは、人間本来の在り方ではない。

人間の本来の生き方を無理矢理押さえつけ、偽りの幸福だけを与えられた、操り人形。

憲兵局より残酷なくらいだ。

本当にそんなことをしているのだとしたら…俺は、断じてシェルドニア王国を許せない。

ましてや、その忌々しい方法で、ルレイア殿を意のままに従わせようとするなんて。

『…そこでだよ、ルアリス。君に頼みたいことがあるんだけど』

「はい…何でしょう?」

何度も言うが、俺はルレイア殿に一生をかけても返しきれないほどの恩がある。

だから、俺に出来ることなら、何でもするつもりだが…。

『…ちょっと、シェルドニア王国を見に行ってくれないかな』

「…え?」

さすがにこのお願いには、俺は開いた口が塞がらなかった。