シェルドニアにいる三人…特に、ルレイアを人質に取られている以上。

『青薔薇連合会』には、身動きが取れない。

それは仕方がない。人質を取られるってのはそういうことだ。

「…かと言って、我々もあまり派手な行動は出来ないな。本当なら、今すぐにシェルドニアに乗り込んで、ルレイアを連れて帰って、そのままハムスターランドに行きたいところだが」

何で、帰国してすぐハムスターランドに直行なんだよ。

ちったぁ休ませてやれ。

「残念ながら、それは不可能だ。我々の結託が『敵』にバレたら、ルレイアの命が危ないし…」

帝国騎士団と『青薔薇連合会』の繋がりがバレたら、人質である三人の命が危ない。

だから結局は、俺達も派手には動けないのだ。そこは『青薔薇連合会』と同じだ。

それに、何より。

「我々の行動は常に、ルティス帝国を背負っている。下手に行動をして、シェルドニア政府と対立し…国民に影響が出ることだけは、絶対に避けなければならない」

…そういう点では、『青薔薇連合会』の方が動きやすいとも言えるな。

俺達には国というしがらみがある。ルレイア達三人も、確かに守るべきルティス帝国民の一員だ。

しかし、数として見れば、たった三人でしかない。

シェルドニア王国と対立し、ましてや戦争が勃発する事態になったら…。

俺達は国を守る為に、ルレイア達を切り捨てざるを得ない。

立場上、そうしない訳にはいかないのだ。

どうしても。

「それは理解しています。その上で…」

「あぁ。その上で、我々にしか出来ない支援をする。差し当たり…シェルドニア王国に視察にでも行ってみようか」

おいおい。

「どういう名目で行くんだよ」

「本当に洗脳なんてやってるのか見に行こうと思って」

「見に行きたい気持ちは分かるが…。ルティス帝国の代表がいきなり訪ねていくには、口実がないぞ」

「…」

落ち込んだらしく、しゅん、とするオルタンス。

大の男が気色悪い仕草をするな。

すると。

「視察…成程、その手があったか」

次期首領が、何やら頷いていた。

「何か閃いたか?」

「いえ。確かにルティス帝国の代表としては行けませんが…。他の国の代表なら行けるんじゃないかと思いまして」

…他の国の代表、だと?

それが何処の国のことなのか、気にはなるが…。

「…とにかく、帝国騎士団側として出来ることは…シェルドニア王国が本当に洗脳システムなんてものを使っているのか、調べてみることと…。いざ本当に黒となったら、ルティス帝国の代表として、正式にシェルドニアに抗議する」

現状、俺達に出来るのはこの程度だ。

もう少し情報が集まれば…出来ることも増えるのだが。

「ありがとうございます。それだけでも充分です」

次期首領は、素直に頭を下げた。

ともあれ…これでオルタンスも、少しはやる気を出したのではないだろうか。