キツい言い方をするようだが。

何をするつもりだ、と言うより…正しくは。

何が出来るのか、だ。

この状況下で、『青薔薇連合会』に何が出来るのか、俺には思い付かない。

「…」

次期首領も、それは分かっているのだろう。

眉間に皺を寄せて、口をつぐんだ。

「お前達は確かに、ルティス帝国や周辺諸国では、絶対的な権力がある。だが…海の向こうのシェルドニア王国に、お前達の力は及ばないだろう。ルレイアを返せと抗議しようが、洗脳システムを告発しようが…たかがルティス帝国の一マフィアに過ぎないお前達の発言なんて、奴らは相手にもしない。一蹴されるだけだ」

同じことをするなら、俺達帝国騎士団がやった方が、遥かに効果的だ。

俺達は、アルティシア女王と共に、ルティス帝国という国を代表する組織だ。

仮にもルティス帝国を担う俺達の言葉なら、シェルドニアの連中も、無視は出来ないだろう。

所詮、『青薔薇連合会』はマフィアなのだ。

国の代表ではない。

この次期首領も、それが分からない訳ではなかろう。

すると。

「失敬だなお前!うちのアイ公泣かすんじゃねぇ!アイ公泣かす奴はな、アリューシャが五キロ先から撃ち抜いてやるからな!一昨日来やがれ!」

次期首領の横に座って、一心不乱にお菓子を摘まんでいた男が、ビシッ、とこちらを指差して叫んだ。

…なんか、言葉の使い方を間違っている気がするんだが?

お陰であまり怖くないが、こいつ、確か以前会議室の強化ガラスの窓を破壊したスナイパーだよな。

実力だけは確かなのだろう。

頭の方は、ちょっと残念なように見えるが。

「…アリューシャ。それを言うなら、覚悟しやがれ!じゃない?」

「へ?そう?」

まぁ、言いたいことはニュアンスで分かった。

「あと、私別に泣いてないから」

「でも、なんかアイ公が責められてるみたいで腹立った!」

「ありがとう。私は大丈夫だよ、アリューシャ」

…こちらも、何だかんだで良いコンビのようだ。

「それに、彼の言うことは間違ってない。確かに、今回ばかりは私達の力では及ばない。それだけは認めざるを得ないだろう」

…やはり、分かっているか。

分からないはずがないよな。こいつらが。

「一応、顔が割れていない末端の構成員を数名送って、最低限のサポートはさせるように手配していますが…。我々が出来るのは、このくらいです」

「そうか…」

「それに、ルレイアを人質に取られている以上、私達は『敵』に感知される行動を取ることは、一切出来ません」

だろうな。

だからこそ、わざわざ俺達のところに、報告に来たのだろう。