「…とはいえ、シェルドニア王国が何をしていようと、それはシェルドニア王国の問題だ。冷たいようだが、俺達には関係ない」

…全くだよ、オルタンス。

お前が言うと説得力が違うな。

「俺達に関係があるのはルレイアだけだ。何より、俺はルレイアとハムスターランドに行きたい…」

それはいい加減諦めろ。

いつまで言ってんだ。

「大体、俺達も今日貴殿らに言われるまで、シェルドニアがそんなことをしているなんて知らなかった。それだけ、彼らも上手くやっているんだろう」

「…そうですね。私も…ルルシーやルリシヤからの情報でなければ、信じなかったでしょう」

「…あの、一つ質問しても?」

ルーシッドが、片手を上げて言った。

「何か?」

「この音声ファイルは、あなた方の仲間から…ルルシー殿達から送られてきたものと言っていますが」

「はい、それが?」

「その証拠は、何かあるんですか?『敵』が何らかの目的で、あなた方の仲間を装って、音声ファイルを送ってきた可能性は…否定出来ないと思うのですが」

…それは。

「…勿論、分かっていますよ。この音声ファイルが『敵』の欺瞞工作である可能性は、ゼロではない」

「なら…」

「でも、それでは前提が崩れる。まずはこれを本物だと思って話を進めなければ、状況は何も変わりませんから」

…だろうな。

この音声ファイルが偽物かもしれないなんて、こいつらだって分かってる。

その上で、敢えて信じることにしたのだ。

「信じがたいものを信じられないと切り捨ててしまえば、それで終わり。まずは信じなければ」

「…そう…ですか」

そりゃ、シェルドニア王国が、国土のあちこちに白い電柱をぶっ立てて、それを使って国民を洗脳して、思うがままにしている、なんて。

信じられないのは当たり前のことだ。

下手なSF小説でもあるまいし。

「それに…正直、この話を聞いて、成程と思いました。洗脳でもしなければ…ルレイアを止められる者なんて、いませんから」

「…確かにな」

それは同意。

激しく同意だ。

あのルレイアが、敵の本拠地と言えども、生きているかも分からずに行方不明、なんて。

しかも、あのルルシーとやらも、一緒に窮地に陥ってるんだろう?

普段のあいつなら、間違いなく死神モードを発動させているところだ。

そんなルレイアが、身動き一つ取れなくなってるなんて…ただ事ではない。

国をあげて強引な洗脳をされていると考えれば、少しは納得出来る。

「…それで、その音声ファイルの中身を知って…『青薔薇連合会』は何を?何か対策を講じるつもりなのだろう?」

ずっと黙っていたルシェが、そう尋ねた。

勿論ルレイアを見捨てることはないんだろう、と。

彼女にとっては、何より気になるところだろう。

「当然です。みすみすルレイアを異国の人間にプレゼントするつもりはありませんから」

次期首領がそう答えると、ルシェはホッとしたような顔をした。

…。

…ルシェや、この次期首領には悪いが…。

「…悪いがな、お前ら…この状況下で、何をするつもりだ?」

俺は、はっきりと彼らにそう尋ねた。