『青薔薇連合会』次期首領、アイズレンシアの話によると。
どうやら、事態はとんでもない方向に向かっているらしい。
「…要するにルレイア達は、シェルドニア王国の権力争いに巻き込まれたんだな?」
「…そういうことですね」
…なんて傍迷惑な話だ。
自分の国の問題は、自分達の手で解決すれば良いものを。
「…しかし、その話が正しいとすれば…ルレイア達三人は、アシミム・ヘールシュミットとかいう女に拉致されたってことじゃないか」
「はい」
「国際問題だぞ、それは」
ルティス帝国の国籍を持つ、れっきとしたルティス帝国民が。
シェルドニアの船に乗せられ、不当な理由でシェルドニアに連れていかれ。
おまけに、帰国することすら叶わない。
これは立派な拉致だろうが。
拉致されたのがマフィアの一員だとしても。
「帝国騎士団から、正式にシェルドニアに苦情を入れられるな。不当に連れていった、三人の拉致被害者を返せ、ってな」
「まぁ、それに素直に応じるとは思えませんけどね」
「…」
…しらばっくれるんだろうな。
うちは拉致なんかしてない、適当なことを言うな、と。
「ルレイア殿のことも気になりますが…。シェルドニアが…その、国民を洗脳しているというのは、本当なんでしょうか」
ルーシッドが言った。
確かに、そちらも無視は出来ない情報だな。
むしろ、こっちの方がヤバいんじゃないか。
被害は、シェルドニア全土に渡っているのだから。
「とても信じられません。この現代社会で、自国の民を洗脳し…国王が都合の良いように操っているだと…」
「現代社会だからこそ、そんな突拍子もないことを思い付くんだろ」
それが実行に移せるだけの、技術力があるもんだから。
誰だって王様なら、家臣や国民が全員自分の思い通りに動いてくれれば良いのに、と思うもんだ。
前女王のローゼリア様だって、今のアルティシア様だってそうだろう。
俺だって、自分の部下が自分の思い通りにならないときは、そんな夢みたいなことを思うときがある。
誰も逆らわず、自分の言うことを聞いてくれれば良いのに、なんて子供じみた考えを。
でも、それはあくまで夢物語だ。
他人が自分の意見に常に逆らわず、従うだけなんて。
そんなの、絶対に有り得ない。
と言うか、有り得てはいけないのだ。
自分に意見があって、それに反対する者がいて、お互いに自分の正しさを主張し合って、擦り合わせながら、双方が納得出来る妥協点を見つける。
それが、国政の基本であり、大前提だ。
ただ一人の独裁者の意見のみが尊重され、反対意見を口に出来ない社会は、遠からず滅びる。
隣の箱庭帝国が、良い例だ。
あの国は、反対意見を口にする者を、恐怖と暴力によって押さえつけていた。
しかし、シェルドニア王国は…そもそも、反対意見を抱くことすら出来ないように、国民を洗脳している。
正気の沙汰とは思えない。
成程、国民を洗脳してしまえば、反対意見を口にする者はいなくなるし、どんな暴政を敷こうが国民はへらへら笑っているだろう。
国民の幸福度だけは、異常に高いはずだ。
国王によって、「自分は幸せだ」と思い込まされているのだから。
シェルドニアは元々、「世界一犯罪の少ない国」として有名だった。
ルティス帝国も見習わなきゃなぁなんて軽く思っていたが、こんなカラクリがあったなんて。
そんな国に見習うところなんか、あるものか。
どうやら、事態はとんでもない方向に向かっているらしい。
「…要するにルレイア達は、シェルドニア王国の権力争いに巻き込まれたんだな?」
「…そういうことですね」
…なんて傍迷惑な話だ。
自分の国の問題は、自分達の手で解決すれば良いものを。
「…しかし、その話が正しいとすれば…ルレイア達三人は、アシミム・ヘールシュミットとかいう女に拉致されたってことじゃないか」
「はい」
「国際問題だぞ、それは」
ルティス帝国の国籍を持つ、れっきとしたルティス帝国民が。
シェルドニアの船に乗せられ、不当な理由でシェルドニアに連れていかれ。
おまけに、帰国することすら叶わない。
これは立派な拉致だろうが。
拉致されたのがマフィアの一員だとしても。
「帝国騎士団から、正式にシェルドニアに苦情を入れられるな。不当に連れていった、三人の拉致被害者を返せ、ってな」
「まぁ、それに素直に応じるとは思えませんけどね」
「…」
…しらばっくれるんだろうな。
うちは拉致なんかしてない、適当なことを言うな、と。
「ルレイア殿のことも気になりますが…。シェルドニアが…その、国民を洗脳しているというのは、本当なんでしょうか」
ルーシッドが言った。
確かに、そちらも無視は出来ない情報だな。
むしろ、こっちの方がヤバいんじゃないか。
被害は、シェルドニア全土に渡っているのだから。
「とても信じられません。この現代社会で、自国の民を洗脳し…国王が都合の良いように操っているだと…」
「現代社会だからこそ、そんな突拍子もないことを思い付くんだろ」
それが実行に移せるだけの、技術力があるもんだから。
誰だって王様なら、家臣や国民が全員自分の思い通りに動いてくれれば良いのに、と思うもんだ。
前女王のローゼリア様だって、今のアルティシア様だってそうだろう。
俺だって、自分の部下が自分の思い通りにならないときは、そんな夢みたいなことを思うときがある。
誰も逆らわず、自分の言うことを聞いてくれれば良いのに、なんて子供じみた考えを。
でも、それはあくまで夢物語だ。
他人が自分の意見に常に逆らわず、従うだけなんて。
そんなの、絶対に有り得ない。
と言うか、有り得てはいけないのだ。
自分に意見があって、それに反対する者がいて、お互いに自分の正しさを主張し合って、擦り合わせながら、双方が納得出来る妥協点を見つける。
それが、国政の基本であり、大前提だ。
ただ一人の独裁者の意見のみが尊重され、反対意見を口に出来ない社会は、遠からず滅びる。
隣の箱庭帝国が、良い例だ。
あの国は、反対意見を口にする者を、恐怖と暴力によって押さえつけていた。
しかし、シェルドニア王国は…そもそも、反対意見を抱くことすら出来ないように、国民を洗脳している。
正気の沙汰とは思えない。
成程、国民を洗脳してしまえば、反対意見を口にする者はいなくなるし、どんな暴政を敷こうが国民はへらへら笑っているだろう。
国民の幸福度だけは、異常に高いはずだ。
国王によって、「自分は幸せだ」と思い込まされているのだから。
シェルドニアは元々、「世界一犯罪の少ない国」として有名だった。
ルティス帝国も見習わなきゃなぁなんて軽く思っていたが、こんなカラクリがあったなんて。
そんな国に見習うところなんか、あるものか。


