…ルレイアじゃない、だと?

「…ルレイアじゃないのか…」

露骨にしょぼん、とするオルタンス。

そういえばこいつ、カチューシャつけっぱなしなのに。

次期首領、全然動じてないな。さすがの器だ。

まぁ、普段ルレイアみたいな変わり者が近くにいるから、色々感覚が麻痺しているのかもしれない。

「ルルシーってのは、ルレイアの相棒だろ?ルリシヤってのは?」

聞いたことがあるような、ないような。

「ルレイアやルルシーと一緒に行方不明になった、もう一人の幹部です。会ったことはあるでしょう?仮面を被った…」

「あぁ…。あいつか」

妙にルレイアと仲が良さそうだった、あの仮面男か。

「そいつらが、こんな高度なメッセージを…?」

ルレイアならともかく。

その二人に、こんな芸当が出来るのか。

「まだうちに入って間もないし、年も若いですが…ルリシヤの実力は、ルレイアと大差ないですよ」

「…マジかよ」

あんな化け物、この世に二人といないと思っていたのに。

そのルリシヤって奴、一体何者だ。

こんな、俺でも同等のものを作れるかどうか怪しい、複雑な暗号文を作れるなど。

あの仮面、伊達ではないってことだな。

「この暗号文の解析は?まだ終わっていないなら、こちらで…」

と、ルーシッド。

こちらにも暗号解析のプロはいるし、『青薔薇連合会』でもて余しているのなら、こちらで解析しても良い。

そのつもりだったのだが。

「当然、もう終わっています。今日はその結果を話しに来ました」

…さすがだな。

俺達に、下手な借りは作らないってか。

全く可愛いげのない奴らだ。

「…結果、とは?」

「まず、このメッセージが送られてきた時点で、ルルシーとルリシヤ、この二人の生存は確認出来ました」

「ルレイアは?」

「…分かりません。死体を見た訳ではないけれど、別行動中だそうで」

「…」

黙り込むオルタンス。

無言で俯くルシェ。

気持ちは分かる。落胆するその気持ちは分かるが。

死体を確認した訳ではないのなら、まだ希望はある。

「…詳しく聞かせてもらおうか」

あいつがくたばったなんて、死体をこの目で見たとしても、にわかには信じられない。