応接間には、『青薔薇連合会』の幹部二人が待っていた。

オルタンスのせいでかなり時間がかかってしまったから、二人共待ちくたびれてイライラしているかと思ったが。

「うまっ!帝国騎士団のお菓子うまっ!」

「アリューシャ。夕飯前だからね。食べ過ぎちゃ駄目だよ。ご飯食べられなくなるよ」

片方が茶菓子をボリボリ食べ散らかし、それをもう片方が諌めていた。

…こちらはこちらで、平和そうで何よりだな。

怒ってる様子はないから、良かった。

「済まない、遅くなった」

「あぁ…どうも。先日ぶりですね」

俺、オルタンス、ルーシッド、そしてルシェの四人が、応接間に入った。

ルシェも、『青薔薇連合会』から使者が来たと聞いて、仕事を放り出してこちらに駆けつけた。

ルレイアのことが、心配で仕方ないのだろう。

まぁ…ルシェなら、無理もないだろうが…。

「それで…何か分かったのか?」

「そうですね…。まずは、これを聞いてもらいましょう」

アイズレンシアとかいう、次期首領の幹部が、テーブルの上に小さな録音機を置いた。

「…これは?」

「まずは一度再生するので、聞いてください。音質が悪いので、耳を澄ませて」 

「分かった」

アイズレンシアが再生ボタンを押す。

こんなに思わせ振りな態度で、一体何を聞かされるのかと思ったら。

非常に…不思議な…メッセージだった。

本人の言う通り、音質はとても悪かった。

無理矢理ノイズを消したのだろう、不自然に音が途切れたりもしていた。

おまけに、ルティス語でさえなかった。

声も小さくて、それにヘリウムガスで声を変えているらしく、聞き取りにくかった。

しかし、所々。

微かに、聞き取れる単語があった。

一応、俺も、オルタンスもルーシッドもルシェも、ルティス帝国の貴族生まれ。

それなりの教育は受けている。

俺達がそれらの単語を聞き取れたのは、その教育の賜物だった。

言語は、どれもバラバラだ。

色々な少数民族の、古い言語が使われている。

それだけではなく、所々暗号らしきものを混ぜながら話しているようだ。

こんなバラバラな言語を組み合わせて、暗号まで使って、わざと複雑なメッセージを作っているということは…。

それに、こんな複雑なメッセージを作ることが出来る人物は…。

「…これ、ルレイアからのメッセージか?」

オルタンスも、当然俺と同じことを考え付いたらしい。

そう考えて、間違いないだろう。

あいつなら、こんな高度なメッセージを作れるだろう。

そして、このメッセージを…遠い異国から秘密裏に送ってきている。

音質が悪く、しかも声を変えているのはそのせいだ。

「敵」にバレないように…わざと、こんな難解なメッセージを作った。

そう考えるのが妥当だ。

しかし。

「…残念だけど、これはルレイアからのメッセージじゃない。ルルシーとルリシヤからのメッセージです」

次期首領は、静かにそう答えた。