そして、この暗殺計画を立てた三日後に、ルルシーとルリシヤが、俺を取り戻す為にヘールシュミット邸を訪れた。

驚くことに、彼らはヘールシュミット邸に食料を運ぶ配送業者のトラックに隠れて屋敷の敷地に侵入し。

屋敷に入ってからは、掃除婦の格好をして堂々と屋敷の中を歩いていたそうだ。

自分でも信じられないのだが、俺はルルシーの顔を見ても、彼を思い出すことが出来なかった。

ただ、妙に胸がざわついたことだけは覚えている。

それ以外は、何も思い出せなかった。

俺は目の前にいる愛すべき相棒と、可愛い後輩を…敵としか認識していなかった。

倒すべき敵。アシミムさんの邪魔をする者。

そう思い込んで、俺は昔使い慣れた双剣を握って、ルルシー達の前に立ちはだかった。

あの二人が本気になれば、俺とルシード相手でも、良い勝負が出来ただろうに。

しかし、二人には戦意がなかった。

二人は、俺の変わり果てた姿を見て、どう思ったのだろう。

彼らは俺を助けに来てくれたのに。

命を懸けて助けに来てくれたはずの二人に、俺は剣を向けたのだ。

二人のことを完全に忘れ、彼らを主の邪魔をする敵だと思って。

もし出来るのなら、あの頃の愚かな自分をぶん殴りたい。

その上、俺は彼らが逃げ出した後、彼らを追跡する役目を負わされた。

二人を見つければ、捕まえて、アシミムの前に突き出すつもりだった。

それでアシミムが二人を殺せと言うなら、殺していただろう。

それが自分のやるべきことだと信じていた。

…もし、「彼女」が二人を逃がしてくれていなければ。

俺は、本当にルルシーとルリシヤを殺してしまっていたかもしれない。