ミレド王を殺す方法は、いくらでもある。

絞殺でも良いし、刺殺でも銃殺でも毒殺でも、何でも良い。

アシミムも、殺し方については指定してこなかった。

殺してくれるなら、好きな方法で殺してくれて構わない。はっきりとそう言った。

簡単なのは銃殺だ。一発眉間にぶちこめば、簡単に死ぬ。

ナイフで刺し殺そうにも、あの分厚い皮下脂肪に守られてしまう恐れがあるからな。

やっぱり、銃弾を一発撃ち込むのが、一番手っ取り早い。

遠くから狙撃で殺せば、あっさりだろう。

何故だろう。昔は、こんなとき…頼りになる人が、近くにいたような気がする。

だが、残念ながら…今俺の傍に、狙撃が得意な人はいない。

一体誰だったっけ?

ともかく、狙撃も無理となると。

次に考えられる手段が、毒殺だ。

暗殺と言えば、一番に考えられる手段が毒殺だろう。

ミレドの飲食物に、毒を混ぜる。

これなら、ミレドの無駄な皮下脂肪に邪魔されることなく、確実に殺せる。

だが、これにも色々と問題がある。

奴は大悪党ではあるが、一応国王なのであって。

側近達だって、国王の飲食物には、常に注意を払っているはず。

毒物の混入には、特に気を付けているはずなのだ。

何より王宮にいる使用人達は、皆洗脳されて、ミレドの忠実なしもべなのだから。

毒殺しようにも、どうやって飲食物に毒を仕込めば良いのか。

「…」

…そうだ。厨房のキッチンメイドをたぶらかして、毒を入れさせれば。

いやいや、俺は何を考えている。

俺みたいな、アシミム以外の女性とはまともに会話も出来ないような奥手が、女性をたぶらかすなんて。

それに、そんな不健全なやり方、倫理に反するだろう。

そんな不純な動機で女性を騙すなんて、男のやることではない。

不意に思い付いた考えとはいえ、何でこんな突拍子もない方法を考え付いてしまったのだか。全く。

とにかく、部外者である俺が、ミレド王の飲食物に毒物を仕込むのは難しそうだ。

それに何より、毒殺が成功したとしても。

王の飲食物に毒が入っていたなんてバレたら、アシミムが疑われてしまう。

とにかく、王の死因は暗殺ではいけないのだ。

あくまで、「病死」あるいは「事故死」でなくては。

そうでないと、アシミムが疑われることになってしまう。

誰もが疑うことなく、不運な死を遂げてもらわなければならない。

その為には。