王宮からの帰り道。

アシミムは、俺に向かって尋ねた。

「どうです?あの男…殺すことは出来ますの?」

「えぇ…。殺すだけなら、簡単ですが…」

そりゃ殺すだけならいくらでも可能だ。

あのまま有無を言わせず、ブスッと突き刺せばそれで終わり。

あんな豚みたいな巨体、どうせろくに抵抗も出来ないのだから。

何食べたらあんなになるんだ。むしろ。

「ですが…。事故に見せかけて…というのは、難しいですね、やはり」

「…そうですの…」

アシミムは、憂いを帯びた表情で嘆息した。

あんな豚男、殺すのは簡単だ。

赤子の手を捻るがごとく、だ、

でも、事故に見せかけて…アシミムに何の疑いもかからないように…暗殺するのは、そう簡単ではなかった。

それもそのはず。

あんなボンクラな王様でも、一応王様なのだ。

無駄に洗脳の技術だけは発達しているだけに、国民からの支持率も高い。

暗殺されたことがバレれば、当然、国全体が総力をあげて犯人を探すだろう。

その犯人探しの容疑者リストに、アシミムの名前が載ってはいけないのだ。

だが、王位継承権を持つアシミムから疑いを晴らすのは、大変困難だった。

アシミムは、ミレド王が死ねば喜ぶ立場にあるのだから。

ミレド王が死んで、一番に疑われるのがアシミムだ。

それは仕方がない。変えられない事実だ。

だから、王を殺すには、絶対にアシミムが疑われない手段を考える必要があった。