The previous night of the world revolution4~I.D.~

華弦が用意してくれた逃走ルートを使って、俺達は無事に逃げおおせた。

潜伏先を特定させない為に、わざと何度も電車やバスを乗り継いで。

丸一日以上かけて、俺達は王都の外れにある、潜伏先のアパートメントに帰り着いた。

何とか無事に帰ってきたものの、ちっとも安心することは出来なかった。

「ルルシー先輩…。大丈夫か?」

「…大丈夫じゃないよ」

とても、大丈夫ではいられない。

逃げているときは、逃げるのに必死で、何とか気を逸らすことも出来たけど。

今となっては…もう無理だ。

「…ルレイア」

ルレイアの、あの変わり果てた姿。

あれが目に焼きついて離れない。

生きていてくれたことには、安心した。

でも、身体だけだ。

中身は、完全に死んでいる。

光の方のルシファーだろうが。闇の方のルレイアだろうが。俺はどちらの彼でも良かった。

しかし、俺を知らない彼は。

俺を敵だと認識して、剣を向けてくる彼は…全く、考えたことすらなかった。

…想像するだけで、耐えられなかったからだ。

…俺を知らないルレイア。

俺を友人だと思っていないルレイア。

俺の…知らないルレイアだ。

とてもではないが、耐えられる気がしない。

「…ルレイア先輩のあれは、アシミムの洗脳の結果なんだろうか」

「…そうだろうな…」

「ということは、次会ったとき、またルレイア先輩はルルシー先輩に剣を向けるだろうな」

…あぁ。そうなるだろうな。

そのときのことを想像しただけで、胸が押し潰されたように苦しくなる。

いっそそうなる前に、自分で首を吊った方が良いんじゃないか?なんて馬鹿げたことを思い付くくらいに。

「…一応、聞いておこう。ルルシー先輩は、ルレイア先輩と殺し合う勇気はあるか?」

「ない。全くだ」

あいつを殺し合わなきゃならないなら、俺が死ぬ。

ルレイアをこの手で殺してまで、生き残る意味などない。

「…でも、ルレイア先輩もきっとそうだと思うぞ。自分の手でルルシー先輩を殺すくらいなら、ルルシー先輩の手で殺して欲しいだろう」

「そうかもしれないな。でも、俺には無理だ」

他ならぬルレイアに頼まれたとしても、無理だろう。

もし俺を殺して、死ぬほど苦悩して後悔したとしても。

でもルレイアには生きて欲しい。

生きていれば、立ち直ることも出来るだろうから。

俺は、ルレイアを殺せない。

どうやっても、それだけは無理だ。

「…成程、分かった。ならば、そのときは俺が、約束を果たそう」

「…約束?」

「ルレイア先輩がルルシー先輩を殺そうとしたときは…俺が、ルレイア先輩を殺す」

俺は、ルリシヤの胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。